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啓文社福屋ブックセンター 三島政幸

2010年2月12日
お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)
『お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)』
桜庭 一樹
東京創元社
1,680円(税込)
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《じつは先月、入籍した》

 断っておくが、入籍したのは私ではない。桜庭一樹氏がWEB連載エッセイ「続々・桜庭一樹読書日記」の2009年2月号において、冒頭いきなり入籍を発表したのだ。一般に報道されていなかった(そもそも、作家の結婚が報道されることはまずないのだが)ので、読書界はこのいきなりの報告に驚愕したものである。

桜庭一樹氏は2008年に『私の男』で直木賞を受賞して以降、恐らくはそれまで以上に多忙な日々を過ごされているはずだ。『私の男』以降でも、『荒野』、『ファミリーポートレイト』、『製鉄天使』と新作を発表し、それ以外でも数多くの作品を文庫化(あるいは再文庫化)している。そして2009年に入ってからの突然のご結婚。ここ1~2年は、まさに疾風怒涛の忙しさではないだろうか。

しかし、桜庭氏の趣味の「読書」に関しては、それ以前と全く変わることなく、いやむしろ、それまで以上に精力的になってきているように感じられる。どこをどう縫って読書の時間を捻出しているのか、不思議で仕方がないのだが、登場する本も多彩であり、深く読み解いている。さらに単行本では注釈も詳細に入っており、興味を惹くような構成となっている。本書がきっかけとなり、桜庭氏のファンや読者が多くの新たな本と出合い、さらに読書にのめり込むようになったなら、それは桜庭氏の功績である。
 さらにこれは、ただの読書日記で終わっていない。日常の出来事をユーモラスに描いており、登場する編集者、作家に親近感が沸いてくる。そしてなにより「夫」と繰り広げられる珍妙な遣り取り。読んでいる方もつい、ほのぼのしてしまう。

もちろんそれだけでなく、作家としての志の高さを感じることが出来るのもまた、本書の魅力である。読書記録や日々の何気ない日記の中に、こんな凄い発言も、さらりと出てくる。

《今年、小説は、ノンフィクションにどうしても勝たないといけません。わたしたちはもっとすごいものを書いて。すごい本をつくって。もっともっと遠くに読者を連れていくんだ。》

こんな心構えで書かれた小説を、私たちは、読んでいるのだ。我々も心して桜庭氏の小説に向き合わなければなるまい。
――もっとも、この発言の直後、編集者さんに爆笑されてしまうのだけれど。

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