作家の読書道 第228回:阿津川辰海さん

大学在学中に『名探偵は嘘をつかない』でデビュー、緻密な構成、大胆なトリックのミステリで注目を浴びる阿津川辰海さん。さまざまな読み口で読者を楽しませ、孤立した館で連続殺人事件に高校生が挑む新作『蒼海館の殺人』も話題。そんな阿津川さん、実は筋金入りの読書家。その怒涛の読書生活の一部をリモートインタビューで教えていただきました。

その1「本を読まずにはいられない子供」 (1/13)

  • 大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))
  • 『大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))』
    オトフリート=プロイスラー,トリップ,中村 浩三
    偕成社
    1,100円(税込)
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  • 車のいろは空のいろ 白いぼうし (新装版 車のいろは空のいろ)
  • 『車のいろは空のいろ 白いぼうし (新装版 車のいろは空のいろ)』
    あまん きみこ,北田 卓史
    ポプラ社
    1,100円(税込)
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  • はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
  • 『はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)』
    ミヒャエル・エンデ,上田 真而子,佐藤 真理子,Michael Ende
    岩波書店
    3,146円(税込)
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  • 水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)
  • 『水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)』
    北方 謙三
    集英社
    660円(税込)
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  • 三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)
  • 『三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)』
    吉川 英治
    講談社
    880円(税込)
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――Twitterを拝見していて、阿津川さんは相当な読書家だと思っていました。昨年は何冊読まれました?

阿津川:去年は、たぶん320冊とか。

――お勤めもされていますよね。作家との兼業の生活でどこにそんな時間があるのかと。

阿津川:通勤途中はずっと読んでいるんですけれど、調子のいい時は行き帰りで読み終えるので。それに320冊の中には再読した本や資料本など要点だけを確認しながらパパパって読んだ本もあるので。学生時代からの習慣で、ずっと本を読んでいないと落ち着かないからそうなっているだけなんです。

――その読書遍歴のすべてをおうかがいするのは難しいですが、本日はよろしくおつきあいください。いつも、いちばん古い読書の記憶からおうかがいしているのですが。

阿津川:小さい頃に絵本の読み聞かせは結構してもらっていたんですけれど、たぶん、自発的に読んだのは『大どろぼうホッツェンプロッツ』かあまんきみこの『車のいろは空のいろ』のどちらかなんですよ。そこから本当にいろいろ読みました。小学生の頃に学校で「読書通帳」みたいな取り組みがあったんです。読んだ本の感想と、その本のページ数を記録して「1年に何ページ読もう」という目標があって。通帳がいっぱいになったら、ページを付け足せるんです。今も持っているんですけれど...(と、モニター越しに通帳を見せる)。

――ずいぶん分厚いですね。

阿津川:まあ小学生なので、学校としては年に1000ページとか2000ページくらいの設定だったんだと思います。「月に1冊ずつ、年間10冊くらいは頑張って読みましょう」くらいの目標で、私だけ1人で何万ページとか読んでどんどんページを足していました。小学生の頃だから、やはり「お前本当にそんなに読んでいるのか」と言ってくる奴がいるんですが、聞かれるとあらすじを楽しそうに滔々と話し出すという。
「かいけつゾロリ」とか「ズッコケ三人組」のシリーズはまとめ読みして、「マジック・ツリーハウス」シリーズあたりからファンタジー少年としての読書が始まって。通帳は年ごとに新しいものに変わるんですが、繰り返し読んだものも書いていいと言われたので、4、5、6年生あたりは毎年気に入っていた本を読み返して、「読書通帳」に書いていました。はやみねかおるさんの「夢水清志郎」シリーズと、「ダレン・シャン」シリーズと、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』なんかは、もう好きすぎて毎年読んでいましたね。『水滸伝』や『三国志』を毎年読んでいる時期もありましたし。

――小学生の頃に小説の『水滸伝』や『三国志』ですか。

阿津川:さすがに子供向けの短いもので、長いほうは中学生か高校生になってから読みました。この頃は、ミステリははやみねさんとか、講談社の青い鳥文庫で出ているものくらいしか読んでいなかったですね。

――「パスワード」シリーズとか。

阿津川:そうそう、松原秀行さんの「パスワード」シリーズは大好きでした。

――小説を読む以外に好きなことはありましたか。どんな子供だったのかなと思って。

阿津川:ああ、今もそうですけれどゲームもやっていましたし、漫画も「週刊少年サンデー」や「週刊少年ジャンプ」をみんなで貸し借りしながら読んだり。当時流行っていたのはサンデーの「金色のガッシュ!!」と「うえきの法則」で、特殊設定好きの原点かもしれません。あまり外で遊ぶ子供じゃなくて、ともかくフィクション好きでした。ゲームだったら「ドラゴンクエストⅧ」が出た頃にそればかりやっていて、学校で「ここまで進んだ」と言ったら「そこまでまだ俺たち進んでないからネタバレしないで」と言われたり、そんな会話をしていました。ゲームも「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」とか、ストーリーがあるRPGが好きで。ただ、やっぱり一番は本でしたね。朝のホームルームの前に朝読書の時間があるんですが、学級文庫の本でどれが面白いか結構聞かれていました。本ばかり読んでいる変な小学生でした。

――小学生の頃から司書のようなことを(笑)。国語の授業は好きでしたか。

阿津川:作文や、短篇みたいなものを書く課題はやっぱり好きでした。それが存外楽しかったので、友達と交代でリレー小説みたいなこともやりましたね。ノートに第1章を書いて友達に渡して、翌日に友達が第2章を書いきて、次に自分が第3章を書いて。そのノートはもうどこかにいってしまいましたけれど、学校が舞台の青春小説っぽい内容でした。一人で書いている時は延々とファンタジーっぽい話を書くこともありましたが。

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プロフィール

阿津川辰海(あつかわ・たつみ)
1994年、東京都生まれ。東京大学卒。作家。2017年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」から『名探偵は嘘をつかない』でデビュー。『透明人間は密室に潜む』が「2021本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング1位のほか、ランキングを席巻。最新刊は『蒼海館の殺人』。ジャーロのサイト上にて「阿津川辰海・読書日記」を連載中。