WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【文庫本班】2007年11月の課題図書>『終決者たち(上・下)』 マイクル・コナリー (著)
評価:
3年ぶりにロス市警に復帰したボッシュは気心の知れた相棒ライダーとコンビを組み、未解決のままだった17年前の女子高生殺人事件に挑む。
ハリー・ボッシュを主人公とするシリーズ第11作。既刊作を読んだことはないが、戸惑う場面はほとんどなかった。ボッシュの捜査手腕はブランクがあったとはとても思えないほど鮮やかで、ライダーとの息の合った名コンビぶりも頼もしい。この2人のかっこ良さ、長期シリーズ化も大いに納得。警察内部のいざこざや被害者遺族の苦しみ、都市が抱える闇の部分も丹念に書き込まれていて、最後まで飽きさせない。
未解決事件の被害者や遺族の、忘れられた声に耳を傾けよ。そう肝に銘じて地道な捜査を続けるボッシュとライダーの執念が、あまりに長い年月とあまりに厚い組織の壁を破り、眠っていた虎を揺り起こす。きっちりと片がつくラストには爽快感も覚えるが、なんともいえないやりきれなさも残る。ほろ苦い味わいの作品。
評価:
「事件は会議室で起きているんじゃねえ!」織田裕二の怒号が聞こえてきそうだ。
17年前に発生した17歳少女未解決殺人事件が本書の根底なのだが、面白さの極みはそれを解決するために集結した二人の刑事の熱血ぶりにある。警察内部にはびこった身内隠蔽の闇、本能を抑えることの出来ない男が招いた悲劇、不意に娘を喪失した親の愛情とその後の幸せとは言えない人生の顛末。読ませどころ、悩ませどころ、唸らせどころに事欠かず、上下巻を一日で読ませてしまう。少しの「遊び」もない凝縮した内容展開は、舌を巻くばかりだ。
しかし、要注目はやはり男女の刑事。残念ながら織田裕二や深津絵里ほど若くなく、50才過ぎだったり白髪混じりの容貌なのだが、とにかく前向き。諦めない。上司の意向ではなく経験に元付く自分の勘を信じて実行あるのみ。それは
「俺はずざんな仕事が嫌いなだけさ。ずさんな仕事は未解決事項を残す」
という彼の言葉が何より体現してくれる。
「やってられねえ」上司や難解なプロジェクトを抱える仕事人たちに贈りたい一冊。湾岸署やロス市警でなく、今の君の居場所を輝かせるために。
評価:
マイケル・コナリーの、ハリー・ボッシュシリーズ最新刊。警官をやめて私立探偵をしていたボッシュが、このたびめでたく警官に復帰する、というところからスタートするこの物語。未解決の事件を扱う部署で、17年前に起こった、少女誘拐殺人事件の担当になり、紐解いていくというストーリー。
警官に復帰して、事件を捜査、解決していくという物語自体ももちろんとても面白いのだが、ボッシュが娘を持つ一人の父親だということがこの小説ではいいなぁと共感することのできる材料のひとつ。警官だって、どんなに優秀だって、父親は父親なのですね。ボッシュの気持ちに寄り添える気がしました。
上下巻のうち、バランスとしては下巻のほうにストーリーの展開が詰まっているかんじでした。最後のスピード感がたまりません。
評価:
海外小説なんて、書評で担当しない限りなかなか自分では読まないため、今まで気付かなかったんですが、そうかー。アメリカで殺人犯した場合、時効はないのか。と言うより、時効あるのって日本くらいなのかひょっとすると。
てことで、そもそも俺みたいに前提が分かってないと、何で今さら17年前の未解決事件を改めて捜査し直してるんだろう、と思っちゃうのではないかと。でも、被害を受けた側の気持ちになってみれば、よく理解できるよね。凶悪犯罪に時効なんざ要らない、とこの作品読んで思いました、
それにしても、迷宮入りした事件を辿る主人公・ボッシュの、執念深くて徹底した緻密な捜査には、非常に心惹かれるものがありました。下巻に入って「あれ?もう解決しちゃうの?」と思ったら、残りページを無駄なく使い切るような、更なる重ね技もあって。決着の付け方も、ビターで素敵です。
シリーズ重ねているらしく、以前の作品も気になりました。
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