WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【文庫本班】2007年11月の課題図書>『怪魚ウモッカ格闘記』 高野秀行 (著)
評価:
探し物中毒の著者が次なるターゲットに定めたのは、未確認動物サイトで出会った怪魚ウモッカ。インドで目撃されたという謎の巨魚、著者は見つけることができるのか。
怪魚? ウモッカ? 格闘? タイトルだけでクエスチョンマークがいくつも浮かび、興味をそそられる。見たこともない巨大な魚と獲るか獲られるかの真剣勝負を繰り広げる著者の勇姿を思い浮かべ、期待度は無限大。さあ、今度はなにをしてくれる?
インドへの道そしてウモッカへの道は、とにかく遠く、ひたすら険しい。これでもかというほどに、事態は予想だにしない展開を見せる。もしも作り話だったら、いくらなんでもありえないだろうっ、と力いっぱい突っ込みたくなるが、これはまぎれもないノンフィクション。小説より奇なることが、現実に起きてしまう。その局面局面に、著者は熱い心と冷静な頭脳で立ち向かう。格闘って、こういう格闘だったのか! という驚きの結末まで、ノンストップでお楽しみください!
評価:
…なんて言うか馬鹿じゃん!。普通そこまでやるか!とか言いながら最後まで一気読み。対岸の思いっきりぶっとんだ非日常はなんて愉快なんだろう。
昼下がり、猛暑の中を机上で仕事をしていると禁断症状が現れるという彼は39歳妻子有り。早稲田大学探検部出身。デビュー作が「幻獣ムベンベを追え」というのだから、その後の著作も押して知るべし。アマゾン、ミャンマー、ビルマ等々という秘境辺境が舞台だ。そう、彼の禁断症状は、「何か探すものはないか」という体の奥底から突き上げる自然現象なのだ。その標的が見つかるや否や、じっとしてられない。待っていられない。「眠い。腹減った。遊んでくれ」と泣き叫ぶ赤子と同等なのだ。で、今回の照準は「ウモッカ」。インド在住?の未知怪魚。未確認不思議動物をテーマとするサイトで出会った、と言う。
実はここまでの記述は本文のプロローグの触りでしかない。本書の馬鹿さ加減、すっ飛び、脅威の最終結果には恐れ多くて触れられない。是非是非、手にとって「ありえねえ」を体読してください。
評価:
この人は、いったいどこまで行ってしまうのだろうか。冒険家(?)高野秀行さんが今度はインドへ、謎の怪魚ウモッカを探しに行ってしまった。
帯に「こんな探検、ありえない!」と書かれているのですが、まったくそのとおりです。ありえない! そもそも、怪魚ウモッカって、一体なんなんだ。未確認動物に関してまったく興味のない私のような人間には、到底届いてこない情報です…。でも本好きだったおかげで、それから高野秀行という、信じがたいような冒険をしてしまう人がいたおかげで、私もウモッカにたどり着いてしまった。
ウモッカも面白いんだけれど、何よりこの人の冒険がすっごい面白い。どこに行った話でも面白いから、冒険には大して興味がないけれど、やっぱり新刊が出ると読んでしまう。高野さんにはまだまだもっともっと冒険してほしいです。
評価:
著者曰く、昭和四十年前後に生まれた人々は、どうやら未知動物という響きに対して激しく反応する世代であるらしい。
かくいう僕もまさに同年代、タイトルで『怪魚ウモッカ』の文字を見ただけで敏感に反応し身もだえてしまった。
インドの何処やらの漁村付近に生息するという幻の怪魚を追った渾身のドキュメント作品。たった一人の目撃証言を頼りに壮大なプロジェクトの幕は切って落とされる。
不思議と高野さんの冒険譚が読者の心に響いてくるのは、けしてそれがおちゃらけの冒険ごっこではなく、彼が恐ろしく真面目で何処までも真剣に事に当たるからである。
あくまでも彼は、怪魚発見捕獲という現実を見据えて対策を練る。さらに彼は持てる力を百パーセント出し切って準備を行う。
子供の頃の純粋な探求心を何処かへ置き忘れてしまったすべての大人に捧ぐ。
評価:
『大航海時代III』というゲームがありまして。例えば、アラビア語のレベルを上げないと、アラブに航海してもゲーム中の台詞がさっぱり分かりません。また、さんざんレベル上げても、いざ探検だー、と出発した途端に、伯爵に捕まって串刺しゲームオーバー、なんてこともあります。この話の教訓は「備えあっても憂いはなくならない」でしょうか。
長々ゲーム話をしたのは、この作品を読んでて「うわーこのゲーム、どうやったらクリアするんだろ?」と思ったからに他なりません。
「怪魚発見か!?」という噂一つで「世紀の大発見は俺が!」と思い立つ唐突なオープニングと言い、出発までの気の遠くなるような「レベル上げ」と言い、いざ出発してから、次々襲いかかる理不尽なトラブルと、それを解決するための格闘(一部、裏技あり?)と言い……真剣にこのゲームを「プレイ」する著者の姿はまさしく「勇者」。そして、このエンディングは業界震撼必至です。
評価:
とにかく熱い。
心の奥底から湧き上がるような高野さんの熱い気持ちがひしひしと伝わった。
前作「アヘン王国潜入記」ではミャンマーの奥地でゲリラと七ヶ月ケシ栽培をした彼、今回はインドへ、怪魚ウモッカを探しに行くのである。
まずは事前調査から始まり、ウモッカつながりの人に会い、現地の言葉を習い、旅の準備をこつこつ続ける高野さん。
そんな彼の前にこれでもかというくらい困難の嵐が吹き荒れます。
そうそう旅のパートナーは昔の仲間であるキタさんです。
「あ〜じゃあ、いいよ」とあっさり同行の承諾をしてくれた彼。
実に魅力的な存在なのですが、今回の旅においてはものすごく重要な役どころなんです。
最後の最後まで彼の行動には目が離せません。
で、高野さんとキタさんの旅はどうだったか〜って? わくわくあり、ハラハラあり、しみじみあり。
これはもう読んでいただくしかないですなぁ。
「ほんとうに人生はわからない」という高野さんの言葉、「本気の人間のすごさっていうのを久しぶりに感じたよ。」というキタさんの言葉、そのままを私はこの本から感じ取りました。
★を10個差し上げたいくらいです。
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