『おちゃめなふたご』ブライトン

●今回の書評担当者●八重洲ブックセンター京急上大岡店 平井真実

  • おちゃめなふたご (ポプラポケット文庫 (412-1))
  • 『おちゃめなふたご (ポプラポケット文庫 (412-1))』
    エニド ブライトン,田村 セツコ,佐伯 紀美子
    ポプラ社
    627円(税込)
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 何年かぶりに学校に通うことにした。といっても、週一回の語学学校である。ここ数年、家と会社の行き来だけで鬱々とした日々が続き、せめてこれから先の人生を通して一つ何か続けることを見つけたかったのもあった。

 とりあえず80分2コマの1か月集中講座を受けている。学校がとても私に合ったため今後もクラスに入り、続けていくつもりである。

 最初は1人で通うつもりだったが、時間の合う友人2人も一緒に通うことになった。しかも少人数制なので私たち3人しかクラスメートがいない。先生への質問、ノートの書き写しや宿題、休憩時間のおしゃべりなど、学生時代に戻ったかのように楽しい。あの頃は宿題なんて嫌なだけだったけど多ければ多いほどなんだか嬉しくなる。

 次の週の授業を楽しみにワクワクと宿題をしているとき、ふと子供の頃に読んだある本を思い出し、買ってきた。ブライトン作『おちゃめなふたご』(ポプラ社)である。

 小学生のころ買ってもらったのと若干装丁が変わっていたが、田村セツコさんのとても可愛らしいイラストはそのままで、そうそう!これこれ!!と懐かしくなり一気にあの頃の懐かしい気持ちを思い出した。忘れていた昔の記憶を思い出すのは、音楽や匂い(ポスカの匂いと冬の冷たい空気はいまだに中学時代の文化祭を思い出します)と共に、そのころ読んでいた本の存在も私にとっては大きい。

 本を開いて小学生ぶりにサリバン家のふたご、パットとイザベルに会う。ふたりは級長でパットはホッケー、イザベルはテニスのキャプテンもつとめ、下級生から憧れのまなざしを受けるほど。14歳になって卒業し、友人たちが進学するお金持ちの子が行く学校へは行かず、両親の普通の生活も経験してほしいという思いの詰まった、どんな子でも入れるというクレア学院に進学する。なんでもやってくれた前の学園と違い、破れたものは自分で繕い、上級生に呼ばれたら身の回りの世話も手伝う慣習もあるクレア学院に最初は反発し、自分たちが一番だと周りを見下していたふたごも、先輩や友人、先生を通し少しずつ態度が変わっていき、友達思いで勇気のある子に成長していく物語である。

 授業中クラスみんなでいたずらをしたり、いやな先生にあだ名をつけたり、寮を抜け出してサーカスに行ってみたり、ラクロスの試合に夢中になったり、真夜中に寮でパーティをしたり。そのパーティにでてくる食べ物が本当に美味しそうで自分も寮に入りたいし、そもそもなんでふたごじゃないんだろうとずっと羨ましく思っていた。

 今大人になって読み返すと、今度はふたごの父親の言葉が心に残る。ふたごがクレア学院なんかに行きたくないと反発するシーンで、なにか新しいことをやってみるのは大切。実力以上に思い上がってたからなにもないところからやりなおしてみたら、自分の力がたいしたことじゃないと気付くさと説くのである。

 ずっと一つのところに在籍してきた中、今新しいことを初めてみて一から学ぶことの楽しさと初心に帰る大切さをあらためて知るうえで心に響く一文である。

 学生時代の懐かしい思いと共に、また今週学校に通学する。あのころとひとつ大きな違いがあるとすると、席の間に大きなアクリルパネルが立ち、先生との間に透明なシートがあることだった。いつかこれがなくなる日を待ち望んでいる。

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八重洲ブックセンター京急上大岡店 平井真実
八重洲ブックセンター京急上大岡店 平井真実
サガンと萩尾望都好きの母の影響で、幼少期から本に囲まれすくすく育つ。読書は雑食。読書以外の趣味は見仏と音楽鑑賞、ライブ参戦。東大寺法華堂と阿倍文殊院が好き。いつか見仏記のお二人にばったり境内で出会うのが夢。