『とらのゆめ』タイガー立石

●今回の書評担当者●旭屋書店 礒部ゆきえ

  • こどものとも年中向き 2021年 12 月号 [雑誌]
  • 『こどものとも年中向き 2021年 12 月号 [雑誌]』
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いらっしゃいませ。
まいど、礒部です。

今回ご紹介する本は、これしかない。

『こどものとも 年中向き 12月号 とらのゆめ』タイガー立石(福音館書店)。

ぐうぐうぐう。
とらのとらきちは、ゆめの中をひとりで歩きはじめます。
ねむいねむい。
歩いていると、池や迷路が出てきます。
色や形を変えながら、とらきちは歩きます。

不思議な、ゆめの中のおさんぽ。

これは、1984年に月刊誌『こどものとも』に登場し、単行本にもなりましたが、長らく絶版になっていた絵本です。
それが今月、『こどものとも 年中向き』で復刊しました。

よもやよもや。
こんなことがあるなんて。
ドキドキが止まらない。
この本を手に、レジに並ぶひとときが、とっても楽しかったです。

あの『とらのゆめ』が、しかも月刊誌で復刊だなんて。
嬉しすぎるじゃないですか。
福音館さん、ありがとう。

知り合いが持っていたこの本を見せてもらったのは、書店員になってから。
何度も読むうちに、すっかり虜になってしまい、ずっとずっと手元にくるのを待ち続けていた一冊です。

表紙のとらを見てください。
みどりいろ。
変でしょ。
ちょっと気持ちわるいと思う人もいるかもしれません。
とっても、変です。

しかも、歩きながら、だるまになったり、シマシマだけになったりします。

迷い込んだ迷路も、ずいぶん変。

大人になると、つい意味を考えたり、ヒントを探したりしてしまいます。

でも、ゆめって、普通じゃありえないことが起きても自然と受け入れていたり、おかしな場面に出くわしても、ゆめだと許せちゃう。
変ですよね。

こどもたちと一緒に読んでいると、彼らはいとも簡単に、この世界に溶け込んでしまいます。
「すいかみたーい」とか、
「めっちゃ気持ち良さそう」とか。
時には、一緒に丸まったりして。

不思議を面白がる心と、そこに入り込める想像力。
いくつになっても、忘れずに持っていたいなぁと思います。

この心地よい気味のわるさも、静けさも、記憶に残る一冊。
刊行されてから40年近く経った今も、全く古びません。

私がこの本を好きな理由は、そこにあるような気がします。

考えてばかりも疲れちゃうから、たまにはぼんやりとゆめの中をおさんぽしてみるのも、いいかもしれない。

今夜も、この本を手に眠ります。
ぐうぐうぐう。

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旭屋書店 礒部ゆきえ
旭屋書店 礒部ゆきえ
1983年大阪生まれ。4年前に関東へ嫁いできました。今は池袋で働いています。慣れない東京、恋しい大阪。なんでスーパーにたこ焼きソースが置いてないねん。と泣きながら、今日も山手線で出勤します。