『野ばらの村のピクニック』ジル・バークレム

●今回の書評担当者●旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ

  • 野ばらの村のピクニック (野ばらの村の物語シリーズ)
  • 『野ばらの村のピクニック (野ばらの村の物語シリーズ)』
    ジル・バークレム,こみや ゆう
    出版ワークス
    1,760円(税込)
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いらっしゃいませ。
今週もお待ちしておりました。礒部です。

今回ご紹介したい本は、『野ばらの村のピクニック』ジル・バークレム(出版ワークス)です。

この野ばらの村シリーズは、全部で8巻ありますが、現在復刊で2巻目まで発売されています。

そして、この本。おそらく、日本で刊行されるのは、3度目。(礒部調べ)

私が初めてこの本に出会ったのは、たしか幼稚園の時です。

毎週連れていってもらっていた図書館にこの本が置いていて、よく眺めていたのを覚えています。
図書館のあの低い棚と、小さい椅子も、あの頃の思い出として一緒によみがえってきます。

---これは、野ばらの村に住む、ねずみたちのお話。
野ばらの村のウィルフレッドは、今日、待ちに待った誕生日を迎えました。
そこで、村のねずみたちは、ウィルフレッドをお祝いするため、びっくりピクニックを計画します。
でも、そのことを知らないウィルフレッドは、重い荷物運びに悪戦苦闘。
さて、このピクニック。うまくいくのでしょうか。

この素敵な絵に加えて、作中に出てくる、スミレの砂糖漬けや、さくらそうプディングに、木いちごのブランデー(この本では、ワインと訳されています)。
所狭しと並べられたビンや、おいしそうなお菓子。
見たこともない花の名前。
どれも小さい頃の私を夢中にさせました。

毎回出てくる、ねずみたちのおうちの断面図や、一匹一匹表情の違う、ねずみたち。
ひとつひとつ見ていると、胸がわくわくしてきます。

細かく描かれた絵を、よぉく見て下さい。
あれれ、このねずみはつまみ食いしようとしているのかな。
こっそりバスケットにプレゼントをつめようとしている、ねずみがいるぞ。
あのエプロンのポッケ、ずいぶんふくらんでいるけれど、何が入っているのかしら。

この絵本には、ねずみたちのちょっとしたいたずらと、やさしい気持ちがあふれています。
だいじにだいじに、丁寧につくられた、やさしいにおいのする絵本。

あの頃眺めていた本はもう手に入らないけれど、今回2度目の復刊で、また出会うことができました。

実は、1度目の復刊の講談社版『野ばらの村シリーズ』も、私の本棚にあります。

今回の復刊にあたり、講談社版より大きく、訳者も変わっての登場となりました。

講談社版は、だいたい15センチ四方とちっちゃくて、かわいらしい判型で、岸田衿子さんの訳。
出版ワークス版は、B5変形で、こみやゆうさんの訳になっています。

講談社版の、小さくて鮮やかな絵もいいけれど、出版ワークス版の、イギリスの少し曇った空を思い出す色味も、私は好きです。
それから、岸田さん訳も、こみやさん訳も、どちらも味わい深い。

こうやって、復刊に際して楽しめるのも、紙の本のいいところだなぁと思います。

今月下旬には、3巻目の『野ばらの村の秋の実り』が発売されます。
いまから、待ち遠しい。

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旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ
旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ
1983年大阪生まれ。4年前に関東へ嫁いできました。今は池袋で働いています。慣れない東京、恋しい大阪。なんでスーパーにたこ焼きソースが置いてないねん。と泣きながら、今日も山手線で出勤します。