『私を殺さないで』浜口倫太郎
●今回の書評担当者●ゲオフレスポ八潮店 星由妃
この作品は2019年2月に文庫書き下ろしとして発売されました。
犯罪がエスカレートするペット業界のウラ側に迫る"どんでん返しミステリー"と銘打たれた作品で作者は映画化もされた『22年目の告白 -私が殺人犯です-』の浜口倫太郎さんです。
『宇宙にいちばん近い人』『シンマイ!』『廃校先生』『神様ドライブ』『くじら島のナミ』『貝社員 浅利軍平』などで毎回、全く別人かと思うほど、作品内容が違います。7月には崖っぷち漫才師の起死回生を描いた『ワラグル』も発売されました。
初めに話しておきますが、この「私を殺さないで」はペットを飼っている人にはかなり辛い話しで次々に殺害されていく内容です。
ペット殺しの残虐さがエスカレートしていく先には殺人が待ち受けていた。ペット殺しの犯人と殺人犯の接点はあるのか? 人の命と動物の命、その重さに違いはあるのか?
動物を殺すと懲役5年または罰金500万円に厳罰、人間を殺すと死刑又は無期若しくは5年以上の懲役となる。当たり前だ。ゲームの世界とは違いリセットすれば生き返れる訳ではない。命あるものを殺してしまうのだから......。
私は子供の時、産まれたばかりのワンちゃんを川に投げ捨てている場面に出くわしたことがある。
ペットを何種類も飼っており、動物が好きな人だと思っていただけに子供心にショックが大きかった。なぜ、なぜ、なぜ!と何十年経った今でも忘れる事が出来ない程、未だにその時の情景を思い出しトラウマになっている。
我が家ではワンちゃんを飼っていた。
毎日、元気だった頃のワンちゃんの写真を見ては色々と考えてしまう時がある。ペットと言えども立派な家族の一員なのである。13年、共に暮らしていた為に想いが強すぎてまだ新しく動物を迎え入れることが出来ないでいるのにペットショップではつい可愛い!と眺めている。
ワンちゃんを飼い始めた時に「小さすぎるので出産は諦めてください!と言われ、避妊手術をしなければいけなかったが通常より身体が小さい犬種だったために可愛そうだからと「手術は受けさせたくない!」と娘が泣きながら頼んできたので避妊手術もしないまま、極力、他のワンちゃんと接触をさせないように飼い続けてきた。
果たしてそれがワンちゃんの為なのかと悩んだ事もあった。
人間と共存するペットにとって何が一番幸せなのだろうか? 自然の摂理に反して避妊手術を勧める動物病院。年間4万頭も殺処分しなければならない自治体。罪だとも思わずに動物虐待をしている人。安易に多頭飼育をして崩壊してしまっている人。
ペットを飼っている人、これからペットを飼おうと思っている人にミステリー作品として現代社会に問題提起した作品である。
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- ゲオフレスポ八潮店 星由妃
- 岩手県花巻市出身。課題図書は全て「宮沢賢治作品」という宮沢賢治をこよなく愛する花巻市で育ったため私の読書人生は宮沢賢治作品から始まりました。小学校では毎朝、〔雨ニモマケズ〕を朗読をする時間があり大人になった今でも読んでいて素敵な文章があると発声訓練のごとく、つい声を出して読んでいる変な書店員です。