『ブラック・スクリーム』ジェフリー・ディーヴァー
●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織
やっと少し涼しくなって『読書の秋』がやって来た!
今月は何をご紹介させていただこうかと考えながら......この原稿の締切日なのに『ある男』の試写会に参加してきた。
......と、『ある男』の紹介に入る流れに見えて、この作品は、まだ未読なわたくし。
でも、映画やドラマを観て、その原作を読もう!と思う人は多いのではないだろうか。
ということで、秋の夜長にぴったりの長編『ブラック・スクリーム』をご紹介します!
『ブラック・スクリーム』はジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズ第13作目。
まさに私がジェフリー・ディーヴァーなる作家と出会ったきっかけは、映画『ボーン・コレクター』だった。当時、職場で鬱々としていた私は、予告を観てウキウキと映画を観に行った。
警察官連続殺人事件の捜査中の事故で四肢麻痺となった敏腕科学捜査官ライムと、事件の初動に加わったためライムに現場の鑑識作業の協力を命じられた元モデルの女性警察官アメリア・サックスのバディで、犯人を追っていく。慢性関節炎持ちであるのにグリッド捜査を強いられたサックスは、当初ライムに冷ややかな対応であったが、いくつもの難事件を二人で解決する内、恋仲に発展。サックスがライムの身体となり証拠を集め、ライムがサックスの頭脳となり証拠を分析していく、公私ともに二人で一人なのだ。
新作が出ると、舌舐めずりしながら貪り読んでいたライムシリーズだが、海外ツアーの添乗員となってから積読本となってしまっていた...。
何故なら、デカい!重い!長い!のである。(褒め言葉です)
ちなみに『ブラック・スクリーム』は本編491ページの2段組。(※単行本)
本の虫なので、機内で読む文庫は持っていくが、資料や配布地図など大量の荷物でハードカバーを持つスペースもなければ、ツアー中に読む時間もなく、購入したはよいがしばらく読む時間が取れていなかった。
コロナで仕事が吹っ飛び、いきなり時間が出来た私は、『さぁて、何から読もうか』と我が家の積読タワーから最初に選んだのが『ブラック・スクリーム』であった。
そうしたら、なんと......舞台がいつものアメリカではなくイタリアではないか!ツアーに出れなくてもイタリアとは繋がれるのね!
そして、ライムシリーズ初のアメリカ国外の舞台がイタリアだったのも嬉しい。(ライム的には他の国に行こうとしていたが......)
コンポーザーを名乗る犯人による最初の事件はいつもの舞台NYで起こるのだが、その後犯人は捜査の手をすり抜けアメリカから脱出。まもなくナポリ郊外で新たな事件が発生。ライムとサックスはナポリに向かい、現地で捜査を始める。
前作までを読んでいないから手を出しにくいと思われるかもしれないが、心配ご無用。
急ごしらえのライム・チーム『イタリア支部』なので、毎回登場するライム・チームの面々を知らなくても楽しめます!
そして、ライムとサックスのバディの魅力にハマったら、『ボーン・コレクター』からライムシリーズをぜひ追ってみてください!
- 『私はだんだん氷になった』木爾チレン (2022年9月22日更新)
- 『みんな蛍を殺したかった』木爾チレン (2022年8月25日更新)
- 『デキる猫は今日も憂鬱』山田ヒツジ (2022年7月28日更新)
-
- 山下書店世田谷店 漆原香織
- 『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。