『バトル・ロワイアル』高見広春
●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織
ついに最後のご紹介となり、涙している山下書店世田谷店の漆原です。
今回ご紹介する本は、昨年この機会をいただいた時から最終回でご紹介する本はこれしかない!というか、絶対にこれ!と温めてきた高見広春さんの『バトル・ロワイアル』です。
学校の授業や、読書感想文などの宿題など受動態読書ではなく、自ら読みたいと思い読んだという点で、私が最初に読んだ長編小説です!
某ホラー小説大賞の最終候補に残ったものの、あまりの過激さに落選。その事実もさることながら、洋書のような装丁のかっこよさ。『なに、これ?読みたい』と思い、購入したのを覚えています。そして読み出したら、『やめられない、止められない』とはこのことか!と思いながら、実際は仕事もあるので泣く泣く夜少しずつ読み進めたのでした。
「大東亜共和国」では、全国の中学3年生のクラスから毎年50クラスを無作為に選び出し、選ばれたクラスは生き残りが一人になるまでクラス内で殺し合いを続ける「プログラム」に強制参加させられていた。西暦1997年、プログラムの対象に選ばれた主人公の七原秋也のクラスは、修学旅行に向かっていたはずのバス内で眠らされ「沖木島」へ送り込まれる。爆弾内蔵の首輪を仕掛けられた状態で秋也たちが眠りから覚めると、政府関係者の証の桃色のバッジをつけた坂持金発に「今日は、皆さんにちょっと、殺し合いをしてもらいまーす」と告げられた。かくして、城岩中学3年B組42人のデスゲームの火蓋が切られた。
小説を読んではないけど、映画を観た、漫画を読んだという方も多いかもしれません。また『イカゲーム』の世界的ヒットで、デスゲームというフィクションを楽しむ人、初めてデスゲームに触れたという人も多いでしょう。
多くのデスゲーム作品は、登場人物それぞれの背景にデスゲームに参加する理由があったり、見知らぬ人と戦うという展開ですが、『バトル・ロワイアル』は、無作為に選ばれ強制参加、さらにはクラスメイトとの殺し合いという世界。その中にはもちろん親友もいたり恋人もいたりします。逆に同じクラスでも仲が悪かったり、相手のことを何も知らないというケースも。中学3年生という子供とも大人とも言えない年齢の彼らが、極限の精神状態で人を信じるかどうかの壁にぶつかっていく。1999年の作品ですが、今読んでも全く色褪せることない面白さです。日本を代表するデスゲーム作品と言っても過言ではないと思っております。
と、今回も推し作品への愛を思うままに書かせていただきました。一年間お付き合いいただきありがとうございました!
- 『ひよっこ社労士のヒナコ』水生大海 (2023年3月23日更新)
- 『方舟』夕木春央 (2023年2月23日更新)
- 『悶絶スパイラル』三浦しをん (2023年1月26日更新)
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- 山下書店世田谷店 漆原香織
- 『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。