『ひよっこ社労士のヒナコ』水生大海
●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織
前回は寒いと言っていたのに、すっかり春めいて、というか、もう桜散ってる場所もありますね。東京は平年より10日早い開花だそう。
店舗のリニューアルに伴う改装でバタバタしている中、どうにかお花見の時間を捻出しようと足掻いている山下書店世田谷店の漆原です。
昔は桜といえば入学式=4月のイメージだったのに。
その4月が目の前に迫り、新社会人、大学入学を控え、新生活に入る方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介させていただくのは、水生大海さんの『ひよっこ社労士のヒナコ』です。
社労士とは、正式名称「社会保険労務士」という国家資格者で、労務のスペシャリスト。ちなみに令和4年度の合格率は約5%という難関資格。
主人公の朝倉雛子は、新卒で就職し損ねて、事務系の派遣社員となり、とある会社の総務部に派遣される。その後も別の会社の総務部に派遣され、社労士の資格を取ろうと一念発起。3年かけて見事合格! 社労士事務所に就職し、社労士としてクライアントの会社の労務問題を解決すべく奮闘するのだが、少し空回り気味。ベテラン事務員の丹羽さんには『ヒヨコちゃん』と呼ばれている。
社労士のヒナコシリーズは、3作目まで出ているが、シリーズ第1弾の本作では、6社の労務問題が書かれている。読んでいると、『あれ? おや?』と自分の置かれている状況との既視感を感じるかもしれません。(あまり、感じたくないけれども...)
また、周りもそうだからそんなもんなんだと、ちょっと不満に思っていたことが、実は労務的には問題であるかも...。(もっと嫌ですが...)
パワハラ、産休育休、残業代、裁量労働制、労災、解雇、ブラックバイト...という言葉が気になった方には、ぜひお勧めです!
もちろん架空の会社のフィクションですが、実際起こっていそうな問題ばかり。そして、法に沿って円満解決と全てうまくいかないところも...。
自分だったら、その時どうするか...先を考えるきっかけにもなりそうな、ためになるお仕事小説です。
久々に再読し、社労士の参考書を携えて、どこかのカフェで桜ケーキを食べようかなと思う今日この頃なのでした。
- 『方舟』夕木春央 (2023年2月23日更新)
- 『悶絶スパイラル』三浦しをん (2023年1月26日更新)
- 『残酷依存症』櫛木理宇 (2022年12月22日更新)
- 山下書店世田谷店 漆原香織
- 『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。