『ウニバーサル・スタジオ』

ウニバーサル・スタジオ
  • 北野勇作 (著)
  • ハヤカワ文庫
  • 税込651円
  • 2007年8月
  • ISBN-9784150308988
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  1. ぬかるんでから
  2. クワイエットルームにようこそ
  3. 逃亡くそたわけ
  4. 冷たい校舎の時は止まる(上・下)
  5. 雨恋
  6. りはめより100倍恐ろしい
  7. ウニバーサル・スタジオ
  8. 魔法の庭
  9. ずっとお城で暮らしてる
  10. 血と暴力の国
鈴木直枝

評価:星2つ

 大阪大好き光線雨あられ本である。その自信におじ気つきながら実は羨ましかったりする、私は東北人。
 たぶん…想像できないのだ。その喧騒、その熱気。グリコがあって蟹もいて、それなのに新世界というエリアもある。大阪ってどんだけ大きいかと思ったら、私の住む県より面積は1桁小さかった。
 おそらく…自信がないのだ。早口でまくし立てられることに。カエルの着ぐるみに入るアルバイトの話をこんなに言葉数多く語れるなんてその語彙力に敬服する。何しろこちら東北人。「どさ」「ゆさ」で会話が成立する。
 きっと…引け目を感じているんだ。自分が東北人であることに。「言うねん」「やらなアカン」「ええんとちゃうか」。同じ方言でありながら東北人は訛りを隠そうとする。だがしかし、NHKドラマ「どんど晴れ」の言葉は誇張しすぎである。
 自慢じゃないが、私は大阪を知らない。行ったこともなければ友人もいない。だからイメージだけが膨らむ。食い倒れ、関西弁、吉本興業、たこ焼き、道頓堀川、阪神タイガース…凄いんだろうな。忙しそうだな。迷子になりそう。この本はそんな思いを一層加速させた。駄目、付いて行けないかも。 好きな人はより好きに、そうでない方にはより距離を感じさせてしまう、大阪ラブな本だ。

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藤田佐緒里

評価:星3つ

 いやーなーんてふざけたタイトルだ、と思ったけれど、中身はかなり面白かった! きっちり計算されつくした抜群の構成力で仕上げられた一冊です。
 大阪のガイドブックになら必ず載っている大阪名所、たとえば道頓堀に通天閣。そして大阪名物として誰もが知っているたこ焼き、明石焼き…。この『ウニバーサル・スタジオ』の世界の中では、そのすべてがアトラクション! しかも単なるアトラクションではなく、現実味と皮肉たっぷりのリアルテーマパークに仕立て上げられているのだ。 
 こんなふざけたタイトルだけど(スイマセン!)、人間への警鐘を鳴らす小説であることは間違いない。ちょうど真ん中あたりまで読むとなんだか急にぞっとするのだ、この小説はいま生きている人間に復讐しようとしているのではないか、と。
 とはいえ、小説の中にはパロディやブラックジョークが満載。とても日本人が書いたとは思えないようなブラックな作品です。好きじゃない、って人がいても不思議じゃない気もしますが、私は好きです!

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藤田真弓

評価:星3つ

 ページをめくれば、そこはウニバーサルスタジオ。部屋の一室でちょこんと座っていても、脳内はテーマパークへいざなわれます。スピード感満載のアップテンポで爽快な文体で描かれるシーンは爆裂妄想! 四天王寺の亀の池で亀型メカとザリガニ型怪生物の痛快なバトルが展開したり、大阪のノリのよさが文章から溢れ出てどないせーっちゅーねん! そやけど、なんやうちもつられてハイテンションになってきてるで! なんて下手な関西弁も使いたくなってきます。ところどころに散りばめられたパロディやギャグには少々頬が引きつりますが、一気に読めるのは痛快です。
蛇足ですが、本の最後のページに「続く」とありました。私としては、ぜひ!! 続編では千葉県にある某有名テーマパークを舞台にしたストーリーを書いていただきたいと思いました。

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松岡恒太郎

評価:星2つ

 率直に言って、残念な結果に終わっている。
なんと言ってもまずネタに鮮度が無いのだ。
 ウニバーサル・スタジオというテーマパークを立ち上げて、それに絡めて大阪の街を思いっきりパロってみようとした心意気は解るし、必死さも十分伝わってくる。がしかし、いかんせんそのネタは、大阪ではイマドキ社内で煙たがられている冴えない中間管理職あたりしか口にしないクラスのボケの寄集めでしかないし、なにより無理があるのだ。
笑えません、くすりとも笑えません、もうそりゃ見事にスベってます、ダダズベリってやつです。
 同じ関西をいじるにしても、もっと優先して紹介するべき関西があったはずなのです。例えば、大阪では小学生でも知っている真実、横山ノック先生亡き後、太田房江知事が行ってる大阪府政はあくまで見せかけで、実際には上沼恵美子が大阪城の天守閣に陣取って指図していることなど・・・おっと、これもスベってますか?

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三浦英崇

評価:星3つ

 子供の頃、ばあやの清が「箱根の山から西には魔物が棲む」と言っていたのが、今でも頭から離れず、大阪には生まれてこの方、6時間程度しか滞在したことがありません。いやあ、まさか彼の地がこんなことになっていようとは思いもよりませんでした……

 全国民の何割かを、確実に敵に回した手ごたえはともかく、この作品。関東の人間が違和感を覚えているはずの、数々の大阪特有の事象について、「ウニバーサル・スタジオ」という象徴的なテーマパークを舞台に描いた連作SF短編集。もちろん、愛情はお好み焼きソースのようにこってり塗られてますし、懐の深い大阪の皆様なら、きっと笑って許して下さるはず。

 気に入ったネタは、1985年の阪神タイガース優勝の際、道頓堀に沈んだカーネル・サンダースの「復讐」と、ウニバーサル・スタジオに敵対する某組織の先兵・ネズミとアヒルについて。バカネタは、とことんまで突き詰めてこそ、だと思う次第です。

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横山直子

評価:星3つ

心地よい大阪弁に、すいすいと背中を押されて、あれよあれよという間にウニバーサル・スタジオ、正式名称ウニバーサル・スタジオ大阪に入り込んでしまいました。

「食べられてしまう。」
そうねぇ、ウニに食べられたという感覚にもなりますねぇ。
なにしろ入口はウニの丈夫な歯を思わせるシャッターが開いたり閉じたり…。
その開いてる瞬間にくぐり入るのですから、最初からスリル満点!
そうそうパーク内で出会うのは、巨大タコ、巨大カニ、そしてケロリスト(かえるの着ぐるみ)たちなんですよ!
「大阪と地続きの地獄や、っちゅうこっちゃわな。」
そんな〜えっ!ここって地獄なんですか????

時折まじる標準語にずっこけ、つまづきながらもようやく最後のページまでたどり着く。
はたしてそこには『続く』の文字がポツンと一つ。
そうなんや〜ウニバーサル・スタジオはまだまだ続くんや〜。
楽しみにしてまっせ。続き待ってるで〜。

なんとも摩訶不思議なテーマパーク!
迷ってみるのもいいかもしれません。

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