『汝、星のごとく』凪良ゆう

●今回の書評担当者●明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花

 好きなシーンをいつでもすぐに読めるようにと、読了後も栞を挟んでいる作品がいくつもある。今回紹介させていただく作品があまりにも好きすぎて、日頃漫画以外の本を読まない夫にこの作品のこの部分がいかに大好きなのかを伝えたくて、好きの押し売りをした結果朗読してみたが、感情を抑えることができず嗚咽まみれになり夫を心配させてしまった。自分で読むからいいよ!と言われても一分一秒でも早く感動を伝えたくて深夜1時のリビングで嗚咽を噛み殺しながら朗読を続けた。

 今回私が紹介させていただくのは、凪良ゆうさん著『汝、星のごとく』(講談社)。
 凪良さんの紡ぐ繊細で美しい作品に見合う言葉で作品の魅力を語れる方はそれこそ星の数以上いらっしゃり、そもそも書評の中で多少の物語の核心に迫ることも書くことあると思うが、私の完全なるわがままであるがどうか1周目はできる限りネタバレを見ることもなく本当に頭の中を完全に無にして物語の世界に身をゆだねていただきたい。

 瀬戸内の島で訳ありな家庭で育った高校生の暁美と、少女のように自由奔放な母親と一緒に島に引っ越してきた櫂、この2人の目線がバトン形式となり物語は進んでいくのだが、暁美には暁美の孤独と苦しさ、櫂には櫂の孤独と苦しさが読んでいるこちらも息苦しさを覚えてしまう。生きることって簡単なようですごく苦しい。だからこそ、その苦しさを半分背負ってくれる相手がいるということはどれだけ心強いか感じる。
 私は324ページを宝箱の中に大切にしまうように栞を挟んでいる。ここのシーンの詳細をまだ読んでない方に向けて紹介できる文章力がなく大変申し訳ないが、私はここの暁美の言葉が本当に大好きで愛の形の正解を見たような気持ちになった。

 自分の記憶をたどっていると、夫からのプロポーズの言葉に似たようなもの感じてしまう。
「生きにくいことだらけだと思うけど、苦手なことや足りない部分は補っていけばいいじゃん。そうやって生きていけば少しは気持ちも楽になるやん」と言ってくれた通り、夫の愛の形はあの頃と何も変わることなく日々私を支えてくれている。暁美と櫂とはまた違う愛の形だけど、あの日の夫と暁美の姿が私には被って見えてしまうからこのシーンは特に思い入れが強いのかもしれない。

 愛の形に本当は正解なんてなくて、形があるようでないのが本当の正解なのかもしれないが、ぜひこの作品を読んで愛について考えてみてほしい。この愛に名前を付けることができるだろうか。

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明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花
明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花
山口県岩国市育ち。13日の金曜日生まれの宿命かホラー好き、読むのはお昼派。ジャンル問わず気になった作品は何でも読みたい欲張り体質。本を読む時に相関図を書くのが密かなマイブーム。