『あんなに あんなに』ヨシタケシンスケ

●今回の書評担当者●明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花

小さい頃、しょっちゅう熱を出したり怪我をしたりと病院に通うことが多かった記憶がある。病院を頑張ったご褒美に近所の和菓子屋さんでお菓子を1つ買ってもらうのが最高の贅沢だった。
近所の公園で友達と遊んでいる時に調子に乗って高いところに登って降ることができなくなり、友達に母親を呼んできてもらって泣きながら抱っこして降ろしてもらったことがあったな。
最近そんな幼少期の母親との記憶がふと蘇ることがある。

今回紹介させていただくのは、ヨシタケシンスケさんの『あんなに あんなに』。
初めて読ませていただいたのは、ポプラ社さんのご厚意で発売前に一足先に読ませていただいたプルーフという見本の形だったが、とにかく内容が本当に素敵だったので発売されるのを指折り数えたほど。発売された頃、出産して間もない義姉への贈り物、自分用にと購入した。子育ての日常に溢れる「あんなに」の中でこどもから大人になっていく様子が愛に溢れていて思わず胸がきゅっとなる。公式での紹介で「こどもと昔こどもだったすべての人に届けたい」というメッセージにも目頭が熱くなる。

関東に住んでいる義姉のところの甥っ子くんと会えるのは年に数回ではあるが、便利な世の中なのでテレビ電話で話すことができるので義実家へ行った時には必ず夫と義母と3人で甥っ子くんへ電話をかける。そのたびに「え!もうこんなに喋れるの!?」「ええ!!もう立派に人間じゃん!!」と甥っ子くんの成長に毎回驚かされる。
ついこの間までバブバブ言ってたはずなのに、今では大好きな電車の名前まではっきり言えるようになって。赤ちゃんの時に私が抱っこしたらあんなに泣いたのに、今では「りかちゃん」と少し照れながらもすごく懐いてくれて。あんなに小さかったのに、もう立派なお兄ちゃんじゃないかと甥っ子くんの成長スピードに大変驚く日々だ。

私自身は子育てをしたことがないが、甥っ子くんの成長を見届けれるのが何よりも幸せだ。
今作に出会ってなお一層、甥っ子くんの成長が楽しみなのと同時に育ててくれた母親へ対しての気持ちも大きくなる。あんなに手のかかる娘だったけど、一応大人の仲間入りをしてどうにかこうにかやっていますよ。なんて、言ってみたくなる。
贈り物として本を贈る機会があるなら、ぜひこちらの作品を検討していただきたい。
お子さんだけでなく、大人への贈り物としてもおすすめだし何より人生に寄り添ってくれる作品なので一度手にとっていただきたい。

これからもすくすく成長する甥っ子くん、改めイッチー。少し照れ屋さんでとても優しい男の子なイッチーの成長をお父さんとお母さん、おばあちゃんだけでなく叔父さん叔母さんのたかしとりかちゃんも見守れるのが何よりの幸せです。いつかイッチーが大きくなったらみんなで「あんなに小さかったのにね」なんてお話ができる日が楽しだよ。今回はイッチーへの私信であり、母への感謝も込めて。

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明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花
明林堂書店ゆめタウン大竹店 船川梨花
山口県岩国市育ち。13日の金曜日生まれの宿命かホラー好き、読むのはお昼派。ジャンル問わず気になった作品は何でも読みたい欲張り体質。本を読む時に相関図を書くのが密かなマイブーム。