『星の王子さま』サン=テグジュペリ

●今回の書評担当者●ゲオフレスポ八潮店 星由妃

  • 星の王子さま―オリジナル版
  • 『星の王子さま―オリジナル版』
    サン=テグジュペリ,Saint‐Exup´ery,Antoine de,濯, 内藤
    岩波書店
    1,100円(税込)
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 昨年の3月末で事業を終了してしまった関越道の「寄居星の王子さまPA」には仕事で各地を回っていたのでよく立ち寄っては運転の疲れを癒しながら「星の王子さま」からの世界観にひたっていたものだった。「星の王子さま」からのさよならメッセージの一文に「この地を去らねばなりません、この地に居続ける事は出来ないのです」とあった。

 小さい時から引っ越しが多かった私はこのメッセージを見た時に色々な土地で出会えた人たちを思い出した。なぜか同じ土地に長くいる事が出来ないので,その地を離れてもなんとなくでも思い出してもらえる人間でいたいなぁと常に思っている。

 そんな私が何度も同じタイトルの本を購入して読んでいるのが『星の王子様』である。

 今、手元にあるのは全て文庫で、集英社文庫(訳:池澤夏樹さん)、角川文庫(訳:菅啓次郎さん)、文春文庫(訳:倉橋由美子さん)、新潮文庫(訳:河野万里子さん)のモノだ。

 一番最初に読んだのは図書館で借りた岩波書店の本だった。

 子育てをしながら子供のために購入したのは講談社青い鳥文庫、集英社の書籍などである(残念ながら手元には無い)。年代を超えて何度も何度も読み続けてる理由として「いちばんたいせつなことは、目に見えない。」だからだ。

 小さいこどもにもわかるような、さりげなく温かい一言だ。優しい一言なのに大人になって読むとふとした日常生活の中で思い出し、物事は表面だけではなく心の目で内面の深いところも見て判断するようにしなさいね。と言われている気持ちになる。

 また「星空を見るだけで幸せになれる」という一文も好きで寂しい時、辛い時は星を見て心を落ち着かせている。

 書店で働いていて長期の休みなどで学校から勧められて本を購入しにいらっしゃるお客様からよく質問されるのが「この【星の王子さま】は何社からも発売しているみたいですが、どの出版社のがおすすめですか?」だ。

 その為、学校から出版社指定が無いか確認した上でお客様に伝える事は「各社の文庫は訳者がそれぞれ違いますし集英社文庫は横書きで他の出版社の本は縦書きです。読みやすいと感じられる方をお選びください。また挿絵は文春文庫、新潮文庫、角川文庫はカラーですが集英社文庫だけ白黒ですのでお客様自身が少し読んでみて気に入った本を選んで下さい」とお伝えしている。

 そんな違いを楽しむことも出来るし訳者あとがきを読んでは本文を思い出すのもまた楽しい。

 1冊の物語がロングセラーとなり色々な出版社から発売されているものを敢えて何種類も読み比べてみるのも読書人として最高の贅沢と言えるのではないだろうか?

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ゲオフレスポ八潮店 星由妃
ゲオフレスポ八潮店 星由妃
岩手県花巻市出身。課題図書は全て「宮沢賢治作品」という宮沢賢治をこよなく愛する花巻市で育ったため私の読書人生は宮沢賢治作品から始まりました。小学校では毎朝、〔雨ニモマケズ〕を朗読をする時間があり大人になった今でも読んでいて素敵な文章があると発声訓練のごとく、つい声を出して読んでいる変な書店員です。