『ピノ:PINO』村上たかし

●今回の書評担当者●ゲオフレスポ八潮店 星由妃

 書店では本の在庫も検索機でほとんど会話しなくても本の場所がわかるようになりセルフレジ導入で対面での接客も少なくなってきている。
 接客は確かに大変なことも多いが人間だから出来ることだと思う。
 私はほんの少しの接客でも笑顔で「ありがとう」とお客様から言われると数倍の気持ちで「ありがとうございます!」と返している。

 私が訪れた大病院では受付にロボットがいた。
 ロボットの指示に従い、患者は個別に呼び出し器を持たされ指示通りに診察室に向かう。
 待合室で待っていると廊下を医療用ロボットが何台も「ボクはホスピーです。」と患者さんに決してぶつからないように避けながら検査したものを搬送していた。
 病院も人員不足なんだなぁと思いながらも、なんだか寂しい気持ち、悲しい気持ちでホスピーの動きを見ていたが、人間ではないので話しかけられることもなく忠実に移動しているのを見て、確かにロボットだから効率よく仕事が出来るからいいのか......などと考えていた。

 さすがに診察をしてくれたのは人間の医師で、看護師さんからの説明もあったが、会計も機械だった為、病院関係の人間と接したのは3名だけで他は患者さんだけだった。

 コロナ禍もあり感染対策としては万全ではあったが、なんだか自分までロボットになったような気持ちになったのは事実だった。

 今月紹介するのは映画化された大ヒット感動作『星守る犬』の村上たかしさんの最新作AIロボットと人間の絆の物語『ピノ』です。

 この物語は自動運転が当たり前になり、人がやらないような仕事は全てロボットがやるようになった近未来の話しです。

 ロボットは心を持たないとはいえ、一緒に暮らす人間にはまだ「心」がある。
 ロボットが残酷に何も考えずに出来ることに対して「心」がある人間にはなかなかそんな事は出来ない。 
 それはロボットには持ち得ない「悲しい」という人間特有の気持ちがあるからだ。
 ロボットは部品の交換がありAIの移植で永遠に生き続けることが出来るが人間には寿命があり永遠には生きられない。

 寿命があるからこそ、残された時間を大切にしたいと思う。

「生きるコト」「死ぬコト」「心を持つコト」

 人生の折り返しを過ぎた今だからこそ後悔をしないように自分が本当にしたいことをし「心」を持つ人間として残された時間を過ごしていきたいと夜空を眺めながらしみじみと思う。

« 前のページ | 次のページ »

ゲオフレスポ八潮店 星由妃
ゲオフレスポ八潮店 星由妃
岩手県花巻市出身。課題図書は全て「宮沢賢治作品」という宮沢賢治をこよなく愛する花巻市で育ったため私の読書人生は宮沢賢治作品から始まりました。小学校では毎朝、〔雨ニモマケズ〕を朗読をする時間があり大人になった今でも読んでいて素敵な文章があると発声訓練のごとく、つい声を出して読んでいる変な書店員です。