2月2日(金)
ここのところ、良いことがない。
仕事もプライベートもなんだか、うまくいかなくて、落ち込む日々。大好きなサッカーもシーズンオフのため、気持ちのやり場に困る。
毎日、出社前にテレビで「やじおちゃんとうまこちゃん」の星占いを確認しているけれど、僕の星座のしし座が満点でも、僕には関係ないようだ。仕事運も金運も恋愛運も、獅子の一声「ガオォー」とともにどこか彼方へ飛んでいってしまったようだ。うーん、営業マンは外見とは違って、実はかなりメンタルな要素に左右されるので、正直言って、参ってしまう。
そこでこんな時は、気分転換に…というと、とても失礼になってしまうけれど、大好きな本屋さんへ行って、自分を奮いたたせることにした。
西武池袋線のN書店。ここは駅前商店街にある小さなお店。店長のTさんは一見強面だけれど、実は気さくで心優しい方なのだ。もちろん本に対する愛情は人一倍で、棚も充実している。毎日、仕入れに画策しているのだ。
ちょっとだけ説明させてもらうと、実は今の出版流通の仕組みでは、このような小さなお店にまともな新刊が配本されることはほとんどない。いや、この欄の読者の方々が大きなお店として認識しているお店でも、思い通りに新刊が入荷することはまれで、また大手出版社の本というものも刷り部数が減っているため満遍なく本屋さんに行き渡ることは少ない。
お店の大・小に関係なく、本屋さんにとって一番大きな悩みの種なのだ。
「この本ありますか?」とお客さんに聞かれ、
「申し訳ございません、当店にはございません。」
という本屋さんの言葉の裏には、実は悲痛な叫びがこもっている。
「お客さんの欲しい本を届けたい。でもその本はいくら注文しても入荷しない。ごめんなさい。」といった気持ち。誰よりもお客さん(読者)に喜んで欲しいと思っているのは、現場にいる本屋さんなのだ。
しかし、この現状を変えるには、よほど思い切った改革をするしかなく、書店さんも出版社も問屋さんも多くの血を流すことになると予想される。その体力が、まだこの業界にあるのか僕にはよくわからない。
さて、通常ルートでの仕入れには限界がある仕組みのなかでN書店のT店長はどのように本を仕入れているのか?
これは都内にある小回りの利くお店でしかできないことだけれど、神保町の裏手にある通称神田村と呼ばれるところへ車で出かけていく。そこは小さな問屋さんが集まっている場所で、通常では手に入らない売れ行き良好書などが、店頭に並ぶことがある。T店長はそれを仕入れ、お店に並べる。ここでの仕入れは現金仕入れ。その場で現金がいるわけで、その資金も必要になる。もちろん返品もできないため目利きが重要になる。本は手に入るが、リスクは大きい。
そして、神田村の問屋さんというのは、つきあいを大切にするお店が多いため、日々通わないと売ってくれない。T店長は何年も顔を出して、やっと仕入れられるようになったらしい。
この神田村に通っている本屋さんというのは、結構多く、『本の雑誌』でおなじみの深夜プラス1の浅沼さんは、毎日午前と午後(時間によって並ぶものが違う)スクーターにまたがって出かけている。このような努力やリスクが、他の業界では当たり前のことなのはわかっているけれど、現状の仕組みで本屋さんが棚を充実させるためにできることは、この程度のことしかないのである。
今日も、T店長とゆっくりお話をする。本の話、バイクの話、T店長の若い頃の話。どんなことでもあきらめず、希望を持って努力し、なおかつ楽しんでいるT店長の姿を見ていると、ヒヨッ子の僕がグチャグチャ不平不満など言っていられない気がした。
T店長に教わったこと。
日常なんて、楽しもうと思えば、いくらでも楽しくなる。
そうなんだ、大事なことを忘れていた。