『炎のサッカー日誌』
もし、あなたが大好きな人を初めてデートに誘い、彼女(あるいは彼)が喜んでOKしてくれ、休日の一日をディズニーランドで楽しく過ごしたとする。とりあえず「好きだ」という気持ちを伝え、相手もまんざらでもなさそうな言葉を返し、帰りの電車の中では手をつないでいたとする。
部屋について、その日の幸せな時間を思い出しつつ、コーヒーでも飲んでいたところに電話が鳴る。彼女(あるいは彼)からで「すごく楽しかった、また遊びに連れていってね!来週暇ある?」なんて言われたらどんな気持ちになるだろうか?
そして約束をした翌週。今度は食事に行ったとする。すると今度はなぜか会ったときから相手が終始不機嫌で、先週の笑顔はどこへやら。この日を楽しみに仕事を頑張ってきたのに、「あなたといるとつまらないのよね」なんて暴言を吐かれ、そのまま席を立たれ、帰られてしまったとする。
しばし呆然となり、部屋に帰り、何だかわからない怒りや焦り、そして自分を振り返ってみたり。自分自身に悪いところはなかったのに、でも最後には彼女(彼)が好きだという気持ちに変わりがないことに気づく。どうしても好きなんだと。
数日後、勇気を出して相手に電話してみると「この前はごめんね、また会おうね。」と言われ有頂天になる。
こんなことが繰り返されたら、あなたはいったいどうなりますか?
さて、長い前振りが終り、本題へ。
ガンバ大阪戦、コンサドーレ札幌戦とまったく危なげない勝利で飾ってくれた我らがレッズ。今期開幕当初から問題視されていたらDF面も改善され、終始安定しだした。オフェンス面も永井が成長し、神様仏様トゥット様が破壊力抜群のゴールを奪う。我らが誇る小野伸二も移籍寸前で最高潮のパフォーマンス。ついに強いレッズが生まれようとしている、そんな大きな期待を抱くのは、サポーターとして当然こと。
観戦仲間のKさんも同じような気持ちで、なんとこの日、朝8時に国立の列並びへ参戦。試合開始は夜の7時。チケットは余っているらしく当日券の販売も予定されている。それならギリギリに行っても充分席は確保できる。
が、しかし我慢ができないのが、このサッカーバカ(僕のことですが)である。暑さもわかっているし、ある程度無駄な時間なのもわかっている。けれど、期待を込めて、昼過ぎ国立到着。
期待しているのは、いつだかのレイソル戦。場所は同じ国立。あの時は驚くべきことに奇跡が7回も立て続けに起こり、終ってみれば7対0の大勝利。あの日の再現を!と願うのは、またまたサポーターなら当たり前のことか。
そんなことをKさんやOさんと興奮気味に話ながら、開門の5時となり、一気に人がなだれ込む。ゴール裏の良い場所を確保。しかし、僕は席についたら突然気分が悪くなってしまった。照りつける太陽のもと、乾いた喉を潤すためにビールだのワインだの飲み過ぎてしまった。ああ、気持ちが悪いと、思わず国立競技場の椅子に寝転がりそのまま試合開始寸前まで爆睡してしまう。
こういうときは、チビに生まれて良かったとつくづく思う。なぜなら、僕は、国立競技場のイス4つで充分寝られるのだから…。
待ちに待ったキックオフ!
僕はまだ半分寝ぼた状態で観戦していたのだけれど、なんとなんと開始早々2分でレイソルにゴールを決められてしまう。サッカーバカにこれほど強烈な目覚しはない!
とにかく目は覚めたものの、見たくない現実…。ああ、と落ち込んでいたところトゥットの強引な突破でゴールネットに炸裂。トゥットの歌を熱唱する。ブラジル代表よ!早くトゥットを呼んだ方がいいんじゃないか!
1対1。前半は互角の勝負を繰り広げ、同点のまま終る。
後半…。
ここからは逆に寝ていれば良かったという試合展開。先日までの強いレッズはどこかへ吹き飛び、柏レイソルに好きなように攻められる。前線からの早いプレッシャー、サイドからの攻撃。レッズの弱点を思い切りついてくるあたりは、やはり優勝候補の一角に名が挙がるチームだ。うーん、我が浦和レッズも、早くこういう切替のできるチームになって欲しい。
終ってみれば2対3の敗北。内容はスコアー以上の差。
数々の期待と想いと願いを打ち砕かれたのは、夜の9時。
Kさんが国立に並んで13時間後のこと。
僕が並び始めて、8時間後。
大切な休日はこのようにして、消えていく。
さてさて、長い冒頭は何のためにあったのか。
僕らレッズバカは常日頃、そういう性悪な女(あるいは男)に振り回されているのと一緒な気がするのだ。期待をすれば裏切られ、あきらめればそっと寄り添われ…。この日は特にそう感じた。
それでも僕は片思いを辞められない。とにかく性悪だろうが振り回されようが、レッズが好きなのだ。いつの日か優勝という両想いの日が来ることを夢見つつ…。