『メールオーダーはできません』

メールオーダーはできません
  • レスリー・メイヤー(著)
  • 創元推理文庫
  • 税込861円
  • 2007年10月
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
  1. 鉄塔 武蔵野線
  2. 生首に聞いてみろ
  3. プラトン学園
  4. 藁の楯
  5. さようなら、コタツ
  6. ボーイズ・ビー
  7. 日傘のお兄さん
  8. 東京大学応援部物語
  9. 文壇うたかた物語
  10. メールオーダーはできません
荒又望

評価:星3つ

 パート勤務先の通販会社で社長の遺体を発見した主婦ルーシーは、クリスマスの準備で多忙ななか、素人ながらに探偵の真似事を始める。
 頼れる夫とかわいい子供。夫婦円満、家庭円満。パートの仲間はみんな仲良しで、いつもにぎやか。だからって、お気楽極楽な毎日というわけでもないのよ。悩みごとだってあるし、地域のこともちゃんと考えているわ…そんな好奇心旺盛な主婦ルーシーが大活躍。ドロドロしたいざこざや影の部分も描かれてはいるものの、全体としては軽〜いタッチのミステリーになっている。各章の冒頭に通販商品の宣伝文句が載っていて、その商品が小道具として登場する、というつくりも楽しい。
 舞台を日本に移して2時間ドラマに仕上げたら、人気シリーズになりそうだ。タイトルはもちろん、『主婦探偵は見た!』で決まり。主演はやっぱり片平なぎさ、それとも名取裕子?

▲TOPへ戻る

鈴木直枝

評価:星4つ

 お母さんであること、主婦であることは、忙しい。大変だ。苦労ばかりだ。だけど、人生を豊かにしてくれる。どんなに大きなショップでも売っていない極上のプレゼントを受け取れる。
 子ども達が寝静まる夜半、通販会社で注文受付のパートをする3人の子どものお母さんが主人公。その会社の経営者の殺害された。第一発見者が、事もあろうに彼女。パート先で同僚とかわすおしゃべりがストレス発散の源のフツウのお母さん。目前のクリスマスや未亡人になってしまった実母や子どものカブスカウトの世話等々、緊急優先課題をいくつも抱えているというのに、犯人探しまで!
 正直、犯人探しはどうでもよかった。ふりかかる課題に彼女が明るくユーモラスに立ち向かう様が、気持ちよかった。これだけ忙しいのに、クリスマスのカウントダウンイベントを怠りなくこなし、子どもの話を聞く。仕事を終え、早朝5時に帰宅しても「ここで眠ると起きられなくなるから」とクッキーを焼く姿に同志を感じた。子どもが好むカブスカウトの手伝いを楽しめない自分を責める様子に共感した。誰もいなくなった部屋でとりつかれたように掃除する背中にほろりと来た。
 章の始めを通販のお薦め商品が飾る。紹介文句の巧妙さに、思わずドル計算をしてしまった。タイトルと内容にややミスマッチがあるものの、ミステリーの枠にくくりきれない枝葉末節まで堪能できる秀作だ。続偏となる次作が楽しみだ。

▲TOPへ戻る

藤田佐緒里

評価:星3つ

 クリスマスを前にした今の時期にぴったりの推理小説。かわいらしいポップなカバーに象徴されるとおり、季節感たっぷりの作品です。
 自殺したのは金持ちの通販会社経営者。その上、美人の妻までいる。自殺なんかしなくたってよかったんじゃないか。美人がそばにいれば、それだけで生きている意味がある気がしてしまうが私の偏見かしら。それで、それを発見した主婦ルーシーが、なぜか事件に首を突っ込んでくる、というストーリー。
 クリスマス前のちょうどこの時期というのは、高校時代、クリスマスキャロルの準備を始めたりしていたので、そのなごりもあって私にとって一年のうちで一番心が躍る季節だ。その、わくわくする雰囲気や、クリスマス前の大忙しの描写がとても楽しく、推理小説なのに、推理以外のところでとても気分を高揚させてくれる季節感あふれる一冊でした。今の時期に読んでいただきたい、クリスマス気分を盛り上げてくれる小説です。

▲TOPへ戻る

松岡恒太郎

評価:星3つ

 子供の頃にテレビで覚えたアメリカは、コミカルに演じられるワンシュチュエーションドラマの中のアメリカだった。そこでは毎週サマンサやダーリン、それから可愛い魔女ジニーなどがドタバタを繰り返していた。
今回の作品には、何故かそんなアメリカの匂いがする。たとえば、登場人物たちはセットの上で楽しげに役を演じ、しかもアメリカらしいセリフ回しの後には観客の笑い声までもが聞こえてくるように思えるのだ。
 十二月も押し迫ったある日、勤め先であるアウトドア用品の通販会社社長が自殺した。主人公で第一発見者のルーシーは、好奇心旺盛でどこにでも首を突っ込む兼業主婦ときたもんだから、さあ大変。クリスマス前後の騒がしい街を舞台に大騒動が巻き起こる。
 殺人事件は確かに起こるけれど、いたって能天気に進むコミカルミステリー、肩の力を抜いて楽しめます。

▲TOPへ戻る

三浦英崇

評価:星3つ

 洋の東西を問わず、主婦は事件に巻き込まれ、探偵になりたがるものなんだなあ、と。うちの母も、暇さえあればサスペンス系のドラマを見ふけり、今ではキャスト見ただけで犯人が分かるレベルになっていますが、その推理力を現実に生かすとなおよさそうですね。もちろん、事件に巻き込まれるのは、息子としてもいろいろめんどうなので勘弁してほしいですが。

 パート先の経営者が乗用車で排ガス自殺。しかし、順風満帆の人生を送っていた彼が自殺なんてありえない、と主人公・ルーシーが素人探偵を始め、あちこち探りを入れているうちに目をつけられ、次々と危険な目にさらされて……日本ならまだしも、アメリカでそんなことしてたら、そりゃ銃だのクスリだのと言った物騒なものが平気で出てくるんだろうなあ、と思ったら案の定。

 事件解決をめざしながら、主婦故の悩みを抱え、そっちの解決にも追われるルーシー。その姿は洋の東西を問わず、やはり忙しいようです。

▲TOPへ戻る

横山直子

評価:星5つ

アメリカの田舎町に住む夫と三人の子どもたちがいるミステリ好きの主婦が主人公ルーシー。
彼女は子どもたちを寝かしつけてから仕事に行く。職場は大手通販会社・カントリーカズンズ。
そう、彼女は夜間の電話オペレーターのパートタイマーとしても働いているのだ。
その職場先で、経営者が自殺!?第一発見者であるルーシーはこの事件に関わることになるのだが…。
この時期、彼女は忙しい。なにしろクリスマス目前だけに、その準備に大わらわ。
プレゼント用意、ツリーの飾りつけ、そして料理、お客様のおもてなしの準備、などなど。
そうそう、クリスマスシーズン恒例の行事、クッキーの交換会もありました。
参加者がご自慢のクリスマスクッキーを持ち寄り、交換する。
まぁ、いつものお茶会のクリスマス版みたいなものでしょうか。表紙のクッキー、実に美味しそうです。
さてさて、ミステリ好きのルーシーのこと、犯人探しも気になりつつ、いかに忙しくて、雑事に心が多少乱れることがあっても、クリスマス準備に余念がありません。
そしてその一つひとつの細々とした描写のなんと楽しそうなこと、出来上がりの美しいこと。
ため息をつきつつ読みながら、我が家のクリスマスの飾りつけも気になり、そわそわしたりして…。
そうそう、メールオーダーはできませんが(笑)、カントリーカズンズの商品説明だけは読むことができますよ。
魅力いっぱいの商品が、各章ごとに紹介してありました。

▲TOPへ戻る

<<課題図書一覧