『古時計の秘密』

古時計の秘密
  • キャロリン・キーン(著)
  • 創元推理文庫
  • 税込693円
  • 2007年11月
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  1. リピート
  2. 裏ヴァージョン
  3. 袋小路の男
  4. 乱世疾走 禁中御庭者綺譚
  5. とせい
  6. 神州纐纈城
  7. 古時計の秘密
  8. 幼年期の終わり
  9. 脱出記
  10. キューバ・リブレ
鈴木直枝

評価:星2つ

 読んだ時期がクリスマス直前だったことが幸いした作品。読了後、心がほわんと暖かくなる。装丁のイラストが現すように、小学生から楽しめる少女探偵物語だ。
 少女、といっても主役は18歳、現役高校生。有能で人望のある弁護士の父をもつという設定にややひがみ根性を感じたが、彼女のストレートな正義感に免じてあげよう。何しろ真っ直ぐなのだ。行動家なのだ。ひらめきがさえているのだ。未遂に終わったものの事故現場で救った5歳の女の子との出会いが、莫大な遺産の遺言書発見レースのスタートだった。
 どこの世界にもいる「もっともっと」と金をせびる腹黒い奴が此処にもいた。が、お金や練習環境に恵まれなくても歌への夢を諦めないいたいけな少女もいる。来客を精一杯の気持ちでもてなそうとする老姉妹もいる。つつましさの中で、筋の通った美しさを感じた。
 骨太の小説が続いたあとには物足りなさを感じるが、家族揃って読むことのできる、ディズニー映画のような小説だった。

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藤田佐緒里

評価:星3つ

 ナンシー・ドルーと言えば児童書。著者はアメリカの児童書作家で、日本でも、児童書としても刊行されています。
 それが今度は、ちょっと萌え〜な雰囲気のカバー。アリスを思わせるような可愛らしい少女が、どーんと登場しています。少女探偵ナンシー・ドルーが活躍する第一作目『古時計の秘密』です。
 内容はかなりわかりやすく、子供も安心して読めるミステリ、というかんじ。ナンシーのドライブ中、一人の少女が川に転落する。少女は無事だったが、少女を家まで運んでみると、そこでちょっとした盗難事件が起きる。そしてその後発覚する、ある強欲な一族の存在。ナンシーは、その一族のせいで困っている人たちをなんとかしようと、奔走します。  
 怖ろしい殺人事件などは起こらないが、謎解きの面白さを十分に感じられる、とても楽しい一冊です。

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松岡恒太郎

評価:星3つ

 単純明快、勧善懲悪、分かりやすいと言えばあまりにも分かりやすいストーリー。
名前からして可愛い主人公のナンシー・ドルーは利発で優しい女の子。かたや敵役として登場するのは、名前からして意地悪なイザベルとエイダ姉妹。
分かりやすいと言えばもう一点、早い段階で判明するとは言え、物語の鍵になるアイテムそのものずばりをタイトルに付けるというオマケまでついています。
 したがってミステリーとは言え謎解き色は薄く、さあ皆さんで一緒に少女探偵の活躍を見守っていきましょう!とナンシーを応援するエンタメ作品的な色合いが濃い。
 実際のところ物足りなさを感じなくもありませんが、ご都合主義もなんのそので突き進む少女探偵ナンシー・ドルーの活躍は、途中で頭をひねる必要もなく、日頃のストレス解消や疲労回復に効果があるやもしれません。
是非一度お試しくださいませ。

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三浦英崇

評価:星2つ

 この1年、俺の書評にお付き合い頂いた皆様には、たいがい見当がついているかと思うのですが、俺は、利発でまっすぐで元気な少女がとっても好きです。誤解を避けるために言っておくなら、それは、恋愛対象としてということではなく「かくあればいいのに」という、憧憬の対象であり、感情移入のための偶像としてということです。言い訳終了。では本題へ。

 で、この作品。確かに主人公は利発でまっすぐで元気な少女なんですが……残念なことに、感情移入しきれずに終わっちゃいました。児童文学の中には、大人が読んでも心動く作品と、子供だからこそ心動く作品があると思うのですが、この作品は、明らかに後者だと思うのです。

 なまじ創元推理文庫なために、ガチガチなミステリを期待してしまった自分が悪いとは思うのですが。本音突き詰めると、少女探偵ナンシーに憧れの想いを抱くには、俺はもはや年寄りだってことかな。10歳になる前に出会いたかった。

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横山直子

評価:星5つ

 読後一番、これは11歳になったばかりの娘が読んだら夢中になりそうと思い、この一冊だけ抜き取った。

魅力的な少女探偵、ナンシー・ドルーのわくわくどきどきハラハラ、そしてとびきりハッピーな物語。
好奇心旺盛で、まるでマザーテレサのように困っている人を見ると素通りできない。
行動力抜群の彼女の姿が実に健気で、読んでる私も「何か手伝うことある?」と声をかけたくなるほど。

今回はあるお金持ち老人の遺言書探しにナンシーが持ち前の行動力であちこち飛び回ります。
彼女の父は地元では名の知れた弁護士で、この親娘関係がなんともほほえましい。
パパが自分に仕事に関しての意見を求めると「パパはわたしの直感を信頼してくれているのよね」と思い、誕生日に車をプレゼントしてくれたときは「パパって最高」と大喜びし、パパの仕事ぶりを見て「やっぱりパパは世界一だわ」と絶賛する。
ナンシーの探偵ぶりは痛快そのもので、ひやりとする部分はもちろんあるものの、一気に読みきってしまう面白さ!
全国の小学校に一冊づつプレゼントしたいなぁと思うほど。この一冊をきっかけに読書好きの子どもが増えるのは間違いなし!

ただ18歳のナンシーが少女なのか?がすこしは疑問ではありましたが…。

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