WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【文庫本班】2008年1月の課題図書>『キューバ・リブレ』 エルモア・レナード (著)
評価:
こんなに夢中になるとは思わなかった。友情、愛憎、信頼、虚栄、欺瞞、貪欲…そこに盛り込まれた要素は、映画3本分以上に値するだろう。
スペイン植民地からの独立を図ろうとするキューバに、「スペインの勝手にはさせねえぜ」とばかりに息巻くアメリカが絡んできた1898年が、熱烈どんでん返し小説の舞台だ。
キューバ史の知識と、「さっきまで敵じゃなかったっけ?」という登場人物の変わり身に手こずる場面もあったが、わからないなりに読み進めていくうちに「そっかー」と合点がいく瞬間がある。
嗚呼、そこでこいつが登場するか…あいつとこいつが繋がっていたか…読み終えたからこそわかる伏線の巧さに舌を巻いた。生きるか死ぬかの瀬戸際で、何を信じ何を選択するか、後半は息を呑む展開が続く。
登場者の中に新聞記者がいる。彼がゾッコン惚れぬく名文家を称する言葉が素敵だ。この1年間、人に読まれることを意識して文章を書いてきたが、自分の下手くそぶりに直面した1年でもあった。この文章に、せめて1年前に出会えていたら、と思った。
評価:
福山雅治撮影の表紙! すごくいい写真なんですよ、これ。お洒落だし、小説の雰囲気にもなんとなく合っている。そしてさらにもう一冊買ったら、ブックカバーがもらえるらしい。話がずれましたが、ジャケ買いしちゃうくらいお洒落な一冊です。
こちらも『脱出記』に続いて冒険モノ。なんだか始まるまでが長い小説、といった印象。主人公はカウボーイで、キューバに渡って馬を売る。ある事件をきっかけに、主人公は投獄されてしまうのだが、なぜか全然関係のないキューバ人が助けてくれる。どうも意味深というかよくわからないというか。ちなみに時代は、米西戦争勃発間近のキューバです。
時代背景や舞台もそうなのですが、登場人物たちの関係性などがごちゃごちゃとどんどん入り組んできて、それぞれが絡み合ってくるような構成になっていて、集中していないとついていけなくなってくるくらいスピード感のある作品でした。
読み応えのある小説でした。犯罪小説の巨匠と呼ばれるエルモア・レナードの、期待を裏切らない快作です。
評価:
時代背景が面白い。舞台は長らくスペインの植民地であったキューバ。独立に立ち上った民衆とスペイン軍が睨み合う最中、さらに隣国アメリカが軍事介入を試み、とうとう米西戦争が勃発するに至る。そのきっかけとなったのが米海軍戦艦メインの爆発事故、物語はそこからスタートする。
そんな非常事態のキューバの地で、主人公でカウボーイのタイラーは、ディーン・マーティンさながらの大立ち回りを演じる。
そして、相棒のバーク、絶世の美女アメリア、騎兵隊に治安警察に大富豪、敵味方入り乱れての誘拐事件は、怒涛の身代金争奪戦へと移行してゆく。
酒場と女と拳銃、西部の町ではないけれど、こいつはまぎれもなくウエスタンです。
そんな、血沸き肉躍る男たちのダイナミックな闘いに、是非酔いしれていただきたいと思うのです。
ただ残念ながら、同じ男の闘いと言ってもルチャ・リブレとは一切関係ありません。
評価:
大学受験で世界史を勉強しても、ラテンアメリカ史ってのはどうしても後回しになってしまいます。馴染みがなくって複雑で覚えにくい上に、あんま出題されないとなれば、「米西戦争」って用語が、受験してから二十年近くを経て久々に思い出されるだけでも、まあ上出来かと思うのです。
そして、用語集なら10行も説明が入らないだろうと思われるこの米西戦争を背景に、密輸、投獄、脱走、誘拐、そして熱愛という、慌しくけたたましいドラマが展開されるこの作品。
最初の方は、何のためらいもなく人に銃を向けてぶっ放す主人公・タイラー(ま、撃つだけの理由はあったにせよ)に、正直あまりスムースには感情移入できなかったのですが、戦争のどさくさに紛れて、いろいろ行動に出るあたりから、次第に許せるようになって来ました。
ま、このキューバという国では、何が起こっても不思議はないんだろうな、という諦めに似た思いが強くなったせいなのかなあ。
評価:
「で、ここまでは計画通りだと?」
「いまのところはね。ただ一つ、計算外だったのは、銀行強盗に恋してしまったこと」
舞台は19世紀末のキューバ、主人公はアメリカ人カウボーイのベン・タイラー。
彼が30頭もの馬を連れてキューバに上陸したシーンから物語は始まる。
その日はちょうど三日前にハバナ湾に停泊していたアメリカ海軍の戦艦メインが爆発事故を起こして沈没したばかりだった。
激動期のキューバで、タイラーを待ち受けていたものとは、一体!?
ひょんなことから彼は絶世の美女アメリアのある誘いに乗り…。
計算外の出来事が人生をより深く深く楽しませてくれる。
キューバのさまざまな状況を目の当たりにしながら、手に汗握るシーンが続出!
最後の1ページまで気が抜けません。
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