1月30日(火)
先日、助っ人の学生から出版社に入りたいと相談を受けた。彼女は来年卒業予定で、これから就職活動が始まるらしい。そう言われても、どこぞの出版社にコネがあるわけでもなく、個人的にもまともな就職活動というものを経験したことがないので、よくわからない。役立たずな言葉しか返せなかった。
「なかなか決まらないと思うんですけど、あきらめないでしつこくやろうと思うんです。」と真剣な面もちで言われたけれど、そのことについてもうまく返答できなかった。出版業界への憧れというのはわかるけれど、僕はそのなかで現実に働いてしまっているわけで、余計なことを言えば冷や水をぶっかけるような気がした。また出版業界の先行きを考えると安易に「頑張りなよ」とも言えなかった。
そして彼女は、経験として僕の営業に一日ついて廻りたいと、またまた真剣な表情で申し入れをしてきた。その気持ちはわかるけれど、僕としては少々荷が重いので断る。
直納(問屋を通さず本を直接書店さんへ納品すること)で人出が足りないなら一緒に書店さんへ行くことも可能かもしれないが、通常の営業時に連れ歩くのにはちょっと無理がある。
売場はお客さんのためにあるわけで、例え営業マンとはいえ、棚の前にいれば邪魔者でしかない。買いたい本、見たい棚をふさぐわけにはいかないと、いつも気をつけている。そこへ二人で行けば、その邪魔が増えるだけだし、書店さんも見たことがない人がいることで話しづらくなるだろう。正直言って僕もやりづらい。
僕の営業を見ても何の役に立たないだろうとも思った。実力はもちろん、彼女が夢見る大手出版社の仕事は、ある種、僕とは対極的な仕事なのだ。
何だかこのことが妙に頭に残っていて気が重かった。
その年代の頃の自分を思い出すと、もう少し親身になる必要があった気もするし、なんだか自分が嫌な大人になってしまったような重たい気分だ。今日も青山通りの書店さんを営業しながら、ぼんやり考えてしまう。
でも、やっぱり仕方がない…。
僕は、単なる一出版社の営業マンでしかないし、それもまだまだ経験不足のヘボ営業マン。一番大切にするのは、書店さんと本を買ってくれる読者なのだ。僕は、大学の先生でもなけば、進路相談の係りでもない。もちろん就職セミナーの講師でもない。それはそちらのプロに任せた方がきっと彼女の役に立つだろう。
ごめんね、役に立てなくて…。