WEB本の雑誌

3月5日(月)

 朝、会社に出社し、休みのうちに届いていたFAXを整理する。ペラペラと担当者ごとに振り分けていると、思わず指が止まった。通しで13枚ほど送られてきたそのファックスは、僕が今一番好きな作家Kさんから届いた原稿だった。

 そのKさんとは、ある書店さんを通じて知り合うことができた。営業マンと作家という一見つながりがありそうで、実はほとんどない関係のなか、それほど頻繁ではないけれど、フッとした機会にメールを交わすような交流が続いていた。それは仕事のつながりというよりは、個人的なつながりだった。

 そんな関係の中、僕は活字中毒者でもあるKさんの「オールタイムベスト10」を読みたいと思っていた。この想いはきっと「本の雑誌」の読者にもつながるのではないかと考え、昨年の暮れにKさんへ原稿をお願いしてみたのである。

 こんなことを営業マンがしてもいいのか、失礼にあたるのではないか、とかなり悩みつつ、それでもお願いすることに踏ん切ったのは、どうしても読みたい、そして知りたいという気持ちが勝ったからだ。

 するとKさんは、非常に多忙なのにも関わらず快く了承してくれ、すぐさま掲載号も決まり、正式な原稿依頼となったのである。

 そして今日。
 そのKさんからの原稿が届いた。

 僕は、一読目を感動で頭がボーっとしびれたまま何も理解ができずに読み終えた。二読目もまだ震えていて、しっかり文章を読むことができない。3読目で少し自分を取り戻し内容を頭で追え、4読目でその原稿の面白さ、素晴らしさに打ち震えた。

 そして僕は、原稿を持ったまま、涙がこぼれ落ちそうになった。

 営業マンの僕の依頼を快く引き受けてくれ、そしてこれだけしっかりとした原稿を書いてくださったKさんへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになってしまったのである。Kさん、ありがとうございました。

 ちなみにこの原稿は5月特大号に掲載します。読者の方々に少しでも楽しんで頂ければ、僕はまた涙を流すことになるでしょう。是非、お楽しみに!