4月2日(月)
あと少しで読了となる宮部みゆき『模倣犯』(小学館)を読み終えるために、長距離営業にでかける。千葉までの総武線の長い道のりでじっくり読書。営業の良い点はこういうところ。まだ上巻を読んでいる浜本や松村の顔が浮かぶ。会社に戻ったらじっくり結末を話してやろうと思わずニヤけてしまう。
ところが、総武線が千葉駅に着くところで物語が佳境に入る。どうなる?宮部さんはいったいどう決着をつけるつもりなんだ?早く先を読みたい、ページをめくりたい。でもこれでこのまま駅のベンチに座って読んでいたら、本格的なサボりだ。こんな遠くで誰かにバレるとは思わないが、こんなときに限って、蚊の目玉ほどの小さな良心が顔を出す。
必死の思いで『模倣犯』をカバンにしまい、S書店さんを訪問。
S書店さんでは、4月号で取り上げた「翻訳家が選ぶ会心の1冊、嫉妬の1冊フェア」を展開していた。担当のUさんもこういった企画を千葉でもどんどんやっていきたいと話す。やっぱりフェアは書店さん独自の企画じゃないと面白くないというのが僕の考えなので、是非頑張って下さいと伝える。
いったいフェアーって何なんだろう?そんなことを考えながら細かく移動し(だから『模倣犯』も読めず)、銀河通信の安田ママさんのお店に顔を出す。するとこんな売上だったんですよとリストを見せてくれた。それは安田ママさんが先日までやっていたフェアで「タイムトラベル」フェアの結果だった。リストを見ていると思わぬ本が売れていたりして、面白い。やっぱり血の通ったフェアは売れるのだ。
読者(お客さん)は決してバカじゃない。これは先日会ったB書店の店長さん達も繰り返し言っていた言葉。レベルが下がったから本を買わなくなったのではなく、これだけいろんな物がある世の中、商品を冷静に観察し、判断する能力は上がってきているのだろうとも話していた。この業界は、今こそ地に足をつけ、読者の冷静な視線と戦わなければいけないと思う。もちろん、本の雑誌社も、もっともっと魅力ある本を作り、そして売るための努力をしなければいけないんだ。
帰りの電車の中で『模倣犯』の続き。もう少しのはずが、ジワジワいろんな感情が湧き起こり、先に進めない。すごいの一言。
結局、会社に戻るまでに読了とはいかず、浜本にも松村にも自慢できなかった。そんなところに深夜プラス1の浅沼さんから電話が入り
「杉江くん、『模倣犯』終った?すごいラストだよねぇ。えっ?終ってないの。実はね…。」とこっちが攻められてしまう。ああ、こんなことなら、ちっぽけな良心なんて駅のごみ箱に捨てて、ベンチでゆっくり読めば良かったと深く後悔する。