4月4日(水)
朝、お隣りのファミリーマートに寄ったら、「チョコエッグ」第1弾が売っていた。これはペット動物シリーズで、実は僕、この頃「チョコエッグ」を知らなくて、欲しくて欲しくて仕方なかったのだ。それにこのシリーズの中にある「日本猫」というのが、我が家で20年近く飼っているバカ猫小鉄にそっくりなのだ。そろそろ寿命が来そうで、先月からボケの症状が出だしてしまった。医者に行ったら表彰ものの長寿ですとのこと。うーん、淋しい。だから僕はチョコエッグの「日本猫」が欲しかった。こいつが出ればもし小鉄に何かがあっても、感情移入できるんじゃないかと思ったからだ。
あわてて3個買い、会社に出社。1個目は「ゴールデンレトリバー」。僕は犬が大嫌いなんだと事務の浜田に投げつける。2個目・・・。
なんといきなり出たのだ「日本猫」。それも僕が欲しかった黒白ぶち。おぉ、思わず大興奮。犬を拾っている浜田に見せつけるけれど、ちょっと怒っているような・・・。まあ、いいか。
「日本猫」をカバンに忍ばせ、気分良く営業に出かけるが・・・。
某路線、某駅、某書店。
ここは駅前の商店街にある小さなお店。しかし店長さんがいつも必死に仕入しているため、しっかりした棚を作っている僕が大好きなお店だ。
お店に入っていきなりビックリしたのは、宮部みゆきの『模倣犯』がしっかり上下巻積まれていることだった。実は、この日ここまで営業してきたお店4件で、この『模倣犯』があったのは1件だけで、そこはいわゆる大手ナショナルチェーンの支店だった。他の書店さんはもうお手上げだよ・・・とこぼしていた次第。いったいどんな手でTさんが仕入れたのだろうか。
「すごいじゃないですか!『模倣犯』があるなんて!さすがTさんですね。」
と興奮したまま話しかけると、Tさんは冷静に
「杉江くん、よーく見てみな。」と言う。
僕は何のことだかさっぱりわからず、積んである『模倣犯』を手にとり、観察する。そして、しばらくしてあることに気づいた。なんと「スリップ」がないのだ。ということは・・・。
「それね、定価で買ってきたの、大型書店で。いっぱい積んであったよ。でもうちは配本0なんだ。でもさ、オレお客さんに言えないよ。あの人とあの人と・・・って町の本屋なら何となくわかるでしょう。いつも宮部さんを買っていて、今度の新刊をずーっと待っていて買いに来る人達が。その人達に『入荷しませんでした』なんて絶対言えないよ。オレにだってプライドがあるし、それでお客さんに愛想つかされたら、こんなちっぽけな本屋終りだよ。いいんだよ、儲けなんて。とにかく今は信用が大事なんだ、生き残るためにね。」
結局Tさんのお店には、『模倣犯』の新刊配本は0だった。ネットの注文で数冊仕入れられたけれど、すぐに品切となり、その後は出版社でも在庫なし。そしてTさんは大型書店に買いに行った。
僕は愕然とTさんの話を聞いていた。いったいこんな商売が他にあるのだろうか。例えば爆発ヒットしている宇多田ヒカルのCDがレコード屋さんにまったく入らない。Asahiスーパードライが酒屋さんにまったくない。
いや、浅草の演歌レコード屋さんにも宇多田はあるし、スーパードライだってどこでも売っている。それもちゃんとしたルートで。
最後にTさんの言葉。
「あのね、これは読者を冒涜しているんだよ、出版社が。だってそうでしょう、この町には宮部みゆきを読むようは読者はいないって判断しているってことでしょう。もしくは欲しけりゃ電車に乗って買いに行けってことでしょう・・・。すごい商売だよね。」
僕にも耳が痛かった。
家の近くで本の雑誌社の本が買えない皆様、申し訳ございません。ただ本の雑誌社は勝手な配本はしていません。