5月29日(火)
大手町のK書店を訪れたら、レジに多くの人が並んでいた。こんなことで驚いていたらしょうがないけれど、今どきあんまりない光景にしばしあんぐり。
よく言われるのは、とにかく文芸書が売れないということ。それは書店さんのベストを見れば歴然でビジネス系読み物や自己啓発的読み物、あるいはタレント本で埋め尽くされている。
売れなければ棚が減る。改装や棚移動をした書店さんの多くで、文芸書の棚は減っていく。文芸版元としては、とても悲しくなる現実。もう小説なんて必要ないのかな…なんてことを思わず丸の内線に揺られながら考えてしまう。
とある書店員さんで聞いた言葉。
「最近ストレスが多いんですよ、売りたくない本ばっかり売れていて、でも商売だから売らないってわけにもいかなくて。あーあ、やんなっちゃいますよね。」
他の書店員さんの言葉。
「俺ね、追い返したの。2番煎じの本持って来た営業マンをさ。だって、そんな本でご飯食べていると思ったら気持ち悪いじゃない。」
極端だけれど、抱えている問題は一緒か。
別に良書・悪書の勝手な思い込みではなくて、ある書店さんではいわゆるエロ本を売ることの意義を聞いたことがあるし、なんていうのか、まともな本を売りたいということだと思う。
まともな本の定義は、きっと本の力で売れる本という意味で、その本にあった数が売れて欲しいということ。パブリシティーの力で売れる今の売れ方を書店さんは淋しく感じているんだと思う。
だからこそ、これぞと思った本を買っていくお客さんに遭遇すると書店員さんの喜びは大きいそうだ。スリップを見つめながら、「なるほどこの本とこの本の組み合わせで買ってくれたのか」などと思わずバックヤードでニヤリとしてしまったりするらしい。そんなお客さんが増えると、この業界はもうひとつ面白くなるような気がするけれど、増やす方法がわからない。
結局、堂々巡りの、またもやひとり営業会議。
とにかく出版社がまともな本を作らなければいけない。