WEB本の雑誌

5月30日(水)

 夕方、銀座A書店Oさんを訪問すると、開口一番
「今日は大丈夫なんですか?」と聞かれる。
何のことかと思って問い直すと
「水曜日だからサッカーじゃないんですか?」と言われ、今はお休みの季節なんですと答えたら「じゃあ、落ち着いて話せますね」と。
 うーん、こんなことを書店さんに心配される営業マンって、いったい僕は何者なんだ…。

 さて、このOさんは本を選ぶ独特の選択眼があって、いつも予想外の面白本を紹介してくれてありがたい限り。本日Oさんが教しえてくれた本、『チリ交列伝』伊藤昭久著(論創社)もそんな本の1冊。

 これはいわゆるチリ紙交換屋さんの人間模様を描いた話で、ある意味無茶苦茶さ、違う言葉で言えば自由さが僕にはたまらなかった。名前も前歴も語らない。もし語ったとしてホラばかり。でもそういう中だからこそ、魅力的な人も多い。バクチにはまる人、掘り出し物を探し続ける一攫千金な人、唐突にもよおして女を買いにいく人。僕のようなサラリーマン生活からは考えられない個性的な人々が描かれていてとても面白い。なんだか、阿佐田哲也の小説のなかに出てくるような人ばかりなのだ。

 この本を読みながらふっと気になったのは、チリ紙交換屋さんの声を聞いていないということ。どうもあとがきや解説を読むかぎり、古紙の値段がまったく下がってしまって商売にならないのと、地域回収が進んだのが理由だそうだ。この『チリ交列伝』に出て来た魅力的な人達はいったいどこへ行ってしまったのか。

 こんな面白本を教えてくれたOさんに感謝しつつ、埼京線でむさぼるように読了。