WEB本の雑誌

7月8日(日)

 いつだかこの日誌でも書いた親友の家に遊びに行った。この親友は、僕に本を読む面白さを教えてくれた奴、である。もちろん「本を読む」ことだけでなく、僕と一緒に馬鹿なことをしてくれる心強い仲間でもある。通称シモ。

 シモの家に遊びに行ったのには理由があって、シモの初めての子供(娘)が生まれ、ちょうど誕生からひと月が過ぎたところだったからだ。そのお祝いとシモの娘との初対面を兼ねて出かけた。

 広いリビングが一段と広く見えるような、小さな布団に包まっているシモの娘に会った。
 お乳をもらったあとで、すやすやと寝ている。ときたま空を切るように腕を動かし、見えないものをつかむ。いったい何を探しているんだろうか?

 実は、僕にとって友達の子供というのは初めての経験で、何だかどう対応していいのかわからない。まだまだ生まれて間もないこともあり、きっと僕がオヤジの親友なぞとわかる訳がない。ただただ、おとなしく眠っているその寝顔を見つめていた。

 しばらくすると、鼻のあたりから下がシモにそっくりなのに気づいた。あまりに似ているので思わず笑ってしまった。笑いながら「そうかお前はやっぱりシモの子供なんだなあ」とそっと指を差し出してみたら、小さな手で力いっぱい握り返される。柔らかくてとても暖かい手だった。その時、突然、僕は思った。

 もしシモに何かがあって、例えば事故や事件に巻き込まれる、あるいは大きな病気を患ったとして、シモの身に不幸な出来事が起こり、この生まれたばかりの娘の面倒を見ることができなくなったとする。
 その時。絶対僕がこの娘の、父親代わりとまではいかないだろうけれど、それなりの面倒をみてやろうと。きっと余計な金なんてないから金銭的な援助はできない。けれど、どこかに連れていって遊んでやったり、父兄参観に変わりに出席することくらいはできるだろう。そして間違ったことをしたら思い切り叱ってやろう…。
 なぜならシモの子供なのだから。

 そのことは、シモには伝えなかった。
 きっとそんなことを話したら「それだけは勘弁してくれ、そんなことになったら俺は死にきれないよ」と言われそうだったからだ。

 でも僕は、シモが何と言おうと、自分の子供のように面倒を見る気になっている。