WEB本の雑誌

10月19日(金)

 夜、会社を出るまで、僕はある一言を待ち望んでいた。何度も何度も浜本の机の周りをうろついてみたが、うるさがられて終わり、過去の話なんていうのもしつこくみんなに振ってみたが、下版前のクソ忙しい状況で、誰もかまってくれない。なんて淋しい会社なんだと僕はあきらめ帰ることにした。

「お先に失礼します。」
それでもまだ、未練を残し、みんなの顔を覗いてみるが、誰も目線を合わせず
「お疲れ」の言葉を放り投げるようにして、外に追い出されてしまった。

 僕が何を望んでいたのか? どんな言葉を望んでいたのか?

 それは、今日が、僕が本の雑誌社に入社して丸4年を終えた記念日だった。朝、出社したときには、その4年前の初出社のことを思い出し、慣れの怖さを知った。また、この4年間、何も出来なかった情けなさも噛みしめた。来週の出社、5年目突入からは、再度気持ちを引き締めて仕事に取りかからなくてはと決意もした。それなのに、そのことに誰も気づいてくれなかった。せめて「4年間、お疲れさまでした。これからも頑張ってくれ!」なんて言葉が欲しかった。

 十号通りを歩きながら、人に過剰な期待してはいけないということを改めて考えていた。

 うん? 僕が丸4年記念日ということは、編集の松村も同日入社だから彼女にとっても記念日だったんじゃないか。まさか…、松村だけ今頃労われているんじゃないだろうな。