10月23日(火)
今日は『三茶日記』の搬入日だ。それなのにくっきり晴れてしまった。搬入日は雨という定説が数カ月ぶりに崩れた。いつも合羽を着て、本が濡れないようにビニールで覆い、たまに入り口のタイルですっころんだりして、とにかく雨の搬入は大変だったのだ。
おまけにこの合羽、事務の浜田の手製で、いわゆる東京都23区推奨ごみ収集袋(炭酸カルシウム30%混合)に穴を3つ開けただけのもの。いったい近所の人はうちの会社のことを何だと思っているんだろうかと不安になる。
晴れるということは大事なことだと思わず、青空を眺め幸せな顔をしていると、事務の浜田がポツリと漏らす。
「杉江さん、実は搬入日に雨が降った本は売れているんです。『真空とびひざ蹴り』も『笑う運転手』も増刷がかかっているし、『日本読書株式会社』も在庫がほとんどないんです。だから雨が降った方が良いんじゃないかと…」
そう言われると営業マンは弱い。売れるのが一番という人生を送っているため、藁だろが、少ない頭髪だろうが何でもすがりたい。
雨が降る日に合わせて発売するために、発売日をずらすことを世間は許してくれるのだろうか? いや、そんなことは関係なく『三茶日記』は売れるでしょう。