WEB本の雑誌

5月22日(火)

 いつも柔和なP書店のT店長さんが怒っていた。ビックリして話を聞くと、なんと万引きの被害にあって、それもかなり高額な本だったそうだ。ヘーゲルとフーコーで3冊15,000円。ふざけるな万引犯!

 P書店はとても小さな町の書店さんで、T店長さん自ら選書した面白本が狭い店内を埋め尽くしている。盗まれたヘーゲルとフーコーもT店長さんのお気に入りの書籍で、いつかそれがわかる人に買ってもらいたいと棚に差していたのである。

「15,000円の本を盗まれるってことは、薄利のこの商売、一日の売上げがパーになるのと一緒なんだよ、こんなことが続いたらうちのお店はつぶれちゃうよ…。それ以来なんかお客さんの動きが妙に気になるし、疲れるよ。」

 T店長さんと万引きの対策を考えた。しかし、思い浮かぶ案はすべてその資金がどこからでるのかに行き着いてしまう。

人員を増やす…そんなお金はない。
監視ビデオの設置…そんなお金はない。
入り口に万引きチェックの機械を導入する…そんなお金はない。

 どうしていつもこの業界で問題になることは、どれもこれも書店さんだけが負担を強いられることに繋がっていくのだろうか…。書店・取次・出版社、表面的には三位一体と言うけれど、万引き対策にしても、この日T店長さんが話していたような雑誌の付録の綴じ込みについても、いったい我が出版社達は、何をしているというのだろうか。
何かもっと方策はないのだろうか。T店長さんの顔を想い浮かべながら、深く反省する。