6月1日(金)
カレンダーを眺めながら今月の予定を考える。新刊のスケジュールや雑誌の配本日などを書き込んで行くと、どんどん日付の下の余白が埋まっていく。
なんだ!今月はクソ忙しいじゃないか!と気づき、こんなスケジュールを立てた発行人浜本をにらむ。が、その浜本はワープロをバシバシ打っていて、まさに暖簾に腕おし。くやしいのでひと腐れしようかと思ったけれど、どうも最近僕は会社で浮いているような気がしているので、それは控えた。
浮いている原因を考えてみると
1.僕だけ外廻りでほとんど会社にいないため社内の会話に
ついていけないから。
2.いわゆる出版社ならではの編集と営業の争い
3.僕個人の人間的な欠陥
事務の浜田にそのことを質問するとあっさり
「別にそんな仕事中におしゃべりしていないし、編集も営業もこんな小さい会社に争いはないし、どうみても3番以外に思い当たる理由がないと思うんですけど!」と言われてしまった。ああ。
僕の愛する中田英寿的思想でいけば、社内でどれだけ浮いていようと嫌われていようが、とにかく社会人は仕事をすればいいわけで、気を取り直して今月18日搬入の新刊『本の業界 真空とびひざ蹴り』の〆作業をする。この本は僕が入社して以来、というかこの本を営業するために僕はこの会社に入社したんじゃないかと錯覚するほどお気に入りの新刊なのだ。内容はもちろん、装丁もバッチリ。売れて欲しい。いや売りたい1冊。
それと平行して行なう仕事は、7月の新刊の注文取り。
なんとこれが本の雑誌社お得意の無計画さによって2点もある。これは営業マンひとり、単行本編集者ひとりの会社では、とてつもなく大変なこと。
この2点の内容は、ひとつ、この「WEB本の雑誌」からの初単行本化、大人気エッセイ『ウエちゃんのタクシー日記』(仮題)。そしてもう1点は、今までの本の雑誌単行本とちょっと毛色が違う外文インタビュー集『One author,One book』(仮題)新元良一著。あまりの両極端さに単行本編集の金子は狂いだし、最近、怪しげな関西弁と横文字を喋っていたりする。うーん、可哀相…。
ちなみに本の雑誌社の本は、書店さんから注文が来ない限り出荷していない。これは他の業界なら当たり前のことなのかもしれないけれど、出版業界では異端な方で、普通の出版社はいわゆる「パターン配本」という、取次店さん(問屋)が書店さんの規模や過去の実績に基づいて配本する方法を取っている。
この利点はそれほど注文をとらなくても配本部数が取れるということ。(最近はそうでもないらしい)。そして欠点は返品が増える可能性が高いことと支払条件が悪いこと。
本の雑誌社のようなチビ会社では予想外に多量の返品があるととても対応しきれないので、基本的に買切り注文制というのを取っている。この利点は注文部数=売上部数になること。欠点は書店さんが買切りを怖がって部数が伸びないことか。
まあ、全国にくまなく配本したところで、どれほど売れるのかわからないし、なるべく営業をしながら書店さんと密に繋がっていたいのもあって、いまのところ後者を選択しているのが現状。
本の雑誌社の本が並んでいる書店さんはある意味勇気のある書店さんでもあり、また並んでいる本があるということは、本の雑誌社のチラシが行っているか、僕がうろついているかの証明なのだ。これは非常にわかりやすいが、逆に並んでいないお店は僕の力不足であるということ。社内で浮いてもいいから、もっと頑張って営業しないといけないなあ。