WEB本の雑誌

7月17日(火)

 小田急線町田方面を営業。

 本厚木のY書店を訪問したら担当のSさんから、「編集後記に書いているんですね」と言われ思わず赤面。この日誌も含めて相変わらず書いたものが公になるということに慣れることが出来ず、シドロモドロになってしまう。本の雑誌社に入ったばっかりに…と後悔してみるが、時既に遅し。

 そのY書店で『新宿熱風どかどか団』椎名誠著<朝日文庫>を発見し、購入。すでに読んでいるものの、今回の文庫化にあたり発行人の浜本が解説を書いているとあっては読ますにいられない。早速、町田への移動のなかで、読みふける。

 浜本が入社当時から今までを振り返った文章を引用。

「…略…
以来、20年間、この間、仕事がイヤだと思ったことは数限りなくあっても、会社がイヤだと思ったことは一度もない。
なぜか。ということを実は一度も考えたことはなかったのだが、本書を読んでいるうちにその理由が朧気ながらわかってきたような気がする
とにかくいいかげんなのである。
…略…」

 この文章を読んで思わず小田急線の座席からずり落ちそうになる。僕と浜本の感覚はまるで逆で、僕は常々
「入社して約4年。この間、仕事がイヤだと思ったことは一度もないが、会社がイヤだと思ったことは山ほどある。
なぜか。そんなことは考えなくてもよくわかる。
とにかくいいかげんなのである。」
と思っていたからだ。

 他の会社から転職してきた身としてはどうしても、前の会社と比較してしまう。そうすると、信じられないくらい「いいかげん」なことが多く、頭を抱えて口篭ることもしばしば。そんなときは、営業前任者Sさんが引継ぎの際に言った言葉が胸に突き刺さる。
「杉江君、入社初日にこんなことを言うのは申し訳ないけど、ここをね、会社だと考えるとつらくなるかもしれないから、何か別の集団だと思った方が良いよ。それとね、編集部の人間を自由にやらせていると、いつまで経っても本が出なくなるからね。営業はビシッと引き締めてね…」

 うーん……。

 しかし、4年ほど、この本の雑誌社にいて、もうひとつわかったことがある。
 それはいいかげんのなかでも絶対いいかげんにしない部分があって、それが本の雑誌の核になっているということ。目黒にしても、椎名にしても、そして発行人となった浜本にしても、とにかくこだわる部分はとことんこだわり、何があってもスタンスを変えない。頑固であり、律義でもあり、またくそ真面目でもある。いいかげんであるのは「組織」の部分で、「個人」の部分ではかなりまともなことに気づいた。

 それ以来、僕は、少しだけ楽になった。そして、自分にそんなまともな部分があるのか、今度は逆に心配になった。