WEB本の雑誌

8月3日(金)

 こういう状況でも、売上を伸ばしている書店員さんがいる。その方がついた担当ジャンルは、毎月、対前年比を大きくクリアーし、常に活気あるお店を演出することになる。

 本日訪れたとある書店のKさんもそんな人のひとり。この4年間でビジネス書から文芸書に移り、その後はコミックへ。その都度その都度、担当になったジャンルは大きく飛躍することになり、もちろんその移る前のジャンルにもノウハウを残していくので、着実にお店全体の売上も上がっていく。恐るべき書店員さんである。

 こんな方にお会いすると、僕は何か秘訣があるんじゃないかと質問を浴びせる。しかし返ってくる言葉は何もビックリするようなことではなく、ほんとに基本に忠実なことばかり。細かい補充、しっかりとした発注、待ってばかりいても仕方がないので取次店の店売などへ自分から仕入れにいくこと。棚をキレイに保つこと。棚に活気を持たせるためいろいろと動かしてみたり、お店にあった本は勝負をかけること、お客さんの応対にはしっかり返答することなどなど。ほんとどれもある意味普通のことばかり。思わず「ほんとは何か秘策があるんじゃないですか?教えてくださいよ」と問いただしてみたけれど、「本が売れる魔法があるなら俺が知りたいよ」と笑われてしまった。

 雑誌やテレビなどで紹介される書店員さんというと、埋もれていた○○の本をフェア展開して何百冊売ったとか、○○の新刊を大量に仕入れ、ドーンと仕掛けをして売ったなど、派手な話ばかり。しかし、そういう書店員さんの本当の力はそんなところにあるのではなく、日常的な地味な業務のなかに隠されているのだと僕は考える。

 Kさんは早朝からお店に出勤し、夜遅くまでエネルギッシュに本と格闘している。夕方訪問しても疲れた顔ひとつ見せずに、僕と話しているときもその手は休まることはない。棚の本を整理したり、売上スリップをチェックしたり、僕の話のなかに何か役立つ情報があればすぐさま手帳に書き込み、あっという間に発注したりする。

 このKさんの期待に応えられるような営業マンになりたいと僕は常々思っている。