WEB本の雑誌

8月6日(月)

 都内をうろついていたら、事務の浜田から携帯に電話が入る。
「○○書店のUさんから注文があったんですけど、最近杉江君が来ないと寂しがっていました。うちのお店はつまらないから来なくなっちゃったのかなあ…って。」

 Uさんのお店はつまらないどころか、その逆でいつも訪問する度に関心させられていた。ただここ数ヶ月僕の訪問日とUさんのお休みがバッティングしてしまうことが続いてしまったため、顔を合わすことが出来ずにいただけなのだ。僕も気にはなっていたので、あわてて予定を変更し、私鉄に乗り込み、Uさんのお店を訪問。

 お店に入っていくと棚差ししていたUさんが顔をあげ「そば屋の出前じゃないんだから…」と笑われる。

 そのUさんと最近の売れ行きの話。
「コミックとビジネスは抜群に良い。前年比でいうと二桁伸び。文芸はトントンで雑誌がちょっと落ち込んでいるかな。でも、理工書が、がた落ちでこれに足を引っ張られて全体の売上が悪くなっているんだよねえ。」とUさんは話す。「今もそのことを悩んでいて、いっそのこと棚を変えちゃおうかと思っているんだけれど踏ん切りがつかなくてね」と続ける。

 書店さんが棚を変える…というのはものすごく勇気のいることで、下手をすると今まで付いていたお客さんが離れ、売上が落ち込む可能性もある。一度離れたお客さんはなかなか戻ってこない。その怖さを知っているだけにUさんは慎重に考えている。

 前日に訪問した書店員さんがとても興味深いを話をしていたのを思い出す。
「1メートル本を置く場所が違うだけで、全然売れ行きが違うんですよ。1と10くらい違うんです。その場所を探すのが書店員の面白さであり、また場所が決まっちゃうと、ちょっと淋しいんですよね」と。
 この書店員さんのいう置く場所とは、何も目立つ場所のことではない。その本に「あった場所」のことである。その本を好きそうなお客さんが気にする棚にしっかり配列するということである。

 この話を聞いて僕は深く関心し、そして少しばかり反省した。とかく出版営業マンというのは目立つ場所にあるかないかということを気にしてしまうもの。入り口の新刊台に積んであるとか、お客さんの通るメインの通路に置いてあるとか。でも実は目立つことよりも、その本が一番効果を現す場所に置かれることが大事なのであるという。もう少し1冊1冊の場所を僕もシビアに考えようと思った。

 はたしてUさんは棚を変えるのか?もし変更した場合、どんな棚になるのか。来月の訪問が一段と楽しみになった。