WEB本の雑誌

8月10日(金)

 ネット企画から初の単行本、そしてウエちゃんの処女作『笑う運転手』の見本が出来上がってきたので、取次店を廻る。ここ数ヶ月、やたらにあやしい関西弁で、「それ、ちゃいまんねん」なんて話していた単行本編集の金子もこれで標準語に戻るだろう。良かった、良かった。もちろん、本も最高の出来で申し分ないと思う。

 単行本の編集者というのは、その時制作している本によってかなり人間性が変わる。ウエちゃんの本を作っているときはやたらに関西人らくしなるし、その前の『One author,One book』の時はニューヨーカー気取りでスタバのコーヒーとベーグルを頬張っている金子の姿を何度も目撃した。SM雑誌編集者の自伝『総天然色の夢』を作っているときは、さすがにこちらも恐ろしく、なるべく金子に声をかけないようにした。机の中から鞭や蝋燭を取り出したらどうしようか…と。

 そのことを金子に伝えると
「スギエッチはそうやって笑うけどさあ、ほんとその本にのめりこんじゃうんだよ。少しでも良くなるように四六時中考えるわけでしょ。もう頭のなかはそればっかりになっちゃうんだよ。そんで出来上がった本は全部かわいい子供なんだよね。」

 ムキになって話す金子を一段と笑いとばしながら、僕は金子と一緒に仕事ができることを誇りに思った。