10月9日(火)
「杉江くん、営業に関してちょっと相談があるんだけど」と大阪帰りの浜本に突然呼びだされる。
僕はその重い言葉を聞いて、思わず微笑んでしまった。それは僕が長年言い続けてきた「ひとり営業」のつらさが、ついに伝わったと思ったからだ。きっと浜本はこう続けるだろう。「杉江くん、営業ひとりはやっぱりキツイと思うんだ、だから来年からもうひとり雇おう」と。僕はニヤニヤしながら浜本に擦り寄っていった。
ところが続いて浜本の口から飛び出して来た言葉に思わず耳を疑う。いや思わず、耳をふさいだ。
「杉江く~ん、大阪って近いんだよ~。今日ね、のぞみに乗ったら2時間半で着いちゃった。それに結構安いんだよ。チケットショップだったら2万ちょっと。だからさ、来年から大阪行っていいから。」
絶句したまま立ちつくしている僕に再度追い打ちをかける言葉が続く。
「1泊していいよ、安いカプセルホテル探してね。3000円くらいかなあ…。そんで大阪・神戸・京都・名古屋、全部廻ってきてね。じゃあ、よろしく。」
ウソのようなことが現実となり、そしてそれが常識となるこの本の雑誌社。来年僕はきっと大阪の街で呆然としていることだろう。浜本を呪いつつ…。