11月12日(月)
「本の雑誌」12月号の搬入日だ。やっぱり雨が降ってしまった。それもかなり激しい雨だ。いったいどうしてここまできっちり搬入日に雨が降るんだろう? しかし、僕は、直行で取次店を廻っていたため、搬入は事務の浜田と経理の小林任せになっていた。女性ふたりで「本の雑誌」数千冊の搬入は非常にキツイ。大丈夫だろうかと不安を感じつつ、お茶の水、飯田橋を移動する。
昼前に取次店T社を終え、これにて取次店廻りは終了。大雨のなか飯田橋駅へ戻る。神楽坂を下り深夜プラス1の方向を見る。ちょうど見覚えのある姿が合羽を着て、バイクから降りるところだった。
それは浅沼さんだった。合羽に付いた大粒の雨をバサバサと振り払っていた。吐き出す息が白かった。
浅沼さんは、こんな激しい雨のなかでも、神田村までバイクを走らせ、仕入をしている。「雨が降ろうと寒かろうと、もしかしたら良い本が出ていると考えると…」と話には聞いていたが、実際にその姿を見たのは初めてだった。声をかけようかと思って数歩歩き出したけれど、ふと立ち止まった。何だかその浅沼さんの必死さに感動してしまって、多分、声が出ないだろうと考え直したからだ。
その日は一日中雨が降っていた。
けれど、僕は何軒もの書店に顔を出した。