●担当者●明屋書店空港通店 久保田光沙

2024年3月28日更新

『アルプス席の母』早見和真

 両手を上げて応援できる早見先生の作品にやっと出会えたのに、先生はもう愛媛にいない。早見先生が最初にサイン本を書きに来てくれた時、奥様手作りのかわいい栞を挟んでくれたし、愛媛でラジオ番組もしてくれたし... 記事を見る »
2024年2月22日更新

『存在のすべてを』塩田武士

 私の理想と共感が詰まった一冊だった。この本が面白いことわかっていたから、本屋大賞にノミネートされた時、読んでないのに嬉しかった。読むと期待通りの面白さで、ほとんどの登場人物を好きになった。  この本... 記事を見る »
2024年1月26日更新

『歌われなかった海賊へ』逢坂冬馬

『同志少女よ、敵を撃て』の著者の二作目が出ていること、みなさん気づいていますか? あまり話題になってない気がするから、私が広めなきゃいけないと、謎の使命感に駆られている。  この本は、ナチスの支配下に... 記事を見る »
2023年12月28日更新

『半暮刻』月村了衛

 この本で直木賞獲ってほしいなぁと思っている。それぐらい面白いし、今のところこの本が今年のマイベスト本だ。  だが、店頭では売れない。決して本が悪いわけではない。私がPOPを書くせいだ。私がPOPを書... 記事を見る »
2023年11月23日更新

『Q』呉勝浩

 始まりはいつだってQ。君にQ、僕らQ、アー、321でQ。ヒーウィーゴー!  これが、スペシャルアザーズとリップスライムのコラボ曲「始まりはQ(9)CUE」の歌詞だと気づいた三、四十代のそこのあなた!... 記事を見る »
2023年10月26日更新

『君が手にするはずだった黄金について』小川哲

 この本は現代版『日の名残り』だ。  私は大学の課題で渋々『日の名残り』を読んだことがある。当時の私は、主人公の執事のプライドの高さにイライラし、「早く告ってフラれてこいよ!」と怒鳴りたくなった。  ... 記事を見る »
2023年9月28日更新

『カード師』中村文則

 新作『列』が発売されたら書評を書こうと我慢していたのに、『カード師』の文庫化でもう私は堪えきれなかった。  私は中村文則が好きだ。  家族旅行で長崎へ行った時、早くハウステンボスへ行きたい子供たちに... 記事を見る »
2023年8月24日更新

『リラの花咲くけものみち』藤岡陽子

「書店員をやっていてよかった」と思える本にたまに出会えることがあるが、この本がそれだ。  この本は獣医を目指す女の子の話だから、キラキラした小説が苦手な私は、自分からは絶対に手に取らないタイプの本だ。... 記事を見る »
2023年7月27日更新

『岡村靖幸のカモンエブリバディ』岡村靖幸

 私は岡村靖幸に五色そうめんを食べさせたことがある。 「岡村靖幸のカモンエブリバディ」というラジオの中に、咀嚼音コーナーというものがある。リクエストされたものを岡村さんが食べて、リスナーはラジオでその... 記事を見る »
2023年6月22日更新

『私はスカーレット』林真理子

 スカーレットは獣だ。私が一度、獣になったことがあるから断言できる。  私が獣になったのは、一人目を出産した後だった。初めての子育てで寝られず、ゆっくり食べられず、トイレすら自由に行けない日々を経て、... 記事を見る »
2023年5月25日更新

『街とその不確かな壁』村上春樹

「悔しい!」の一言に尽きる。  あんなに村上春樹が苦手だったのに、この本はめちゃくちゃ面白い。  私の村上春樹との出会いは高校生の時、どこかの大学入試の過去問だった。何という小説だったか忘れたが、浜辺... 記事を見る »
明屋書店空港通店 久保田光沙
明屋書店空港通店 久保田光沙
愛媛生まれ。2011年明屋書店に入社。店舗や本部の商品課などを経て、結婚し、二回出産。現在、八歳と二歳の子を持つ母でもあり、妻でもあり、文芸担当の書店員でもある。作家は中村文則、小説は「青の炎」(貴志祐介)が一番好き。昨年のマイベスト本は「リバー」(奥田英朗)。