2月16日(木) クリップペンシル

 どうでもいい話を書くので、忙しい方は読まないでください。まあ、いつでも、どうでもいいんだけど。

 樹脂製の短い軸の先に、鉛筆の芯が付いている筆記具がある。ようするに、簡易鉛筆だ。それを最初に見たのは、競馬場である。筆記具を忘れた客用に、全国の競馬場に置いてあるのだ。よその場所で見たことがなかったので、中央競馬会が業者に大量に作らせたものだと考えていた。

 数年前まで、その軸の色は緑だったので、関西の競馬場で黒軸を見たときは驚いた。黒があるのかよ。緑の軸に慣れていると、黒軸が妙に新鮮なのである。だから数本、東京に持って帰った。競馬仲間に見せて自慢しようと思ったのだが、そう思っただけで忘れていたら関東の競馬場も、全部その黒になってしまった。ふーん。

 昨年の春、翻訳ミステリー大賞の発表式があったとき、会場の受け付けにその簡易鉛筆が大量に置いてあったのでびっくり。えっ、誰か関係者が競馬場からこんなにたくさん持って来ちゃったの? たしかに誰でも自由に持っていいものであるから、それでもいいんだけど。受け付けにいた方に聞くと、その簡易鉛筆は文房具店で売っているんだという。そうなんですか。中央競馬会のオリジナルではないんですか。

 そのとき調べれば、その名称もすぐにわかっただろう。しかし、そうか、文房具店で売っているのか、と思っただけで、忘れてしまった。で、話はようやく数日前になる。読むものがないので、たまたま置いてあった「グッズプレス」3月号を開いたのだ。この雑誌には見開きコラムを連載しているので、そのページを開いたら、ペンケースの写真が大きく載っている。

 私のコラムは、時計、タオル、傘、万年筆など、毎回モノをテーマにしたエッセイである。3月号はペンケースだった。その写真説明を読んでいたら、そこに次のような一文があった。

「もちろん馬券購入時に使用するクリップペンシルも常備。ぬかりなし!」

 大きな写真は、ペンケースを中心にしたものだが、そこからはみ出るように10数本のマーカーと、黒と緑の、例の簡易鉛筆が数本写っている。

 そのとき初めて、簡易鉛筆のことを「クリップペンシル」というのだと知りました。そこで今度はすぐにネットで調べてみると、いやはや驚いた。幾つものメーカーがこの「クリップペンシル」を作って販売しているのだが、中には黒と緑だけでなく、赤だの黄色だの、カラフルなものがあるのだ。毎週競馬場で黒軸を見ている人間としては、そのカラフルさに感動してしまった。こんなにあるのかよ。

 50本セットが450円と安いことにも感動。カラフルなやつを競馬場に持っていけば、「なに、それ!」と競馬友達が驚くのではないか。想像するだけで楽しい。で、つい買ってしまったのである。まだ、届いていないけど。