新刊めったくたガイド
1978年6月発行の第9号からスタートした「本の雑誌」の看板コーナーが、WEB本の雑誌に登場!
大塚真祐子 記事一覧
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2020年12月号掲載
家族を破壊し再構築する『だまされ屋さん』に震える!
家族、と検索すると「同じ家に住み生活を共にする配偶者および血縁の人々」、「近親者によって構成される人間の最小の居住集団」などの説明がつづく。配偶者と血縁者の隔たり、事実婚や別居婚と呼ばれる関係性など...記事を見る »
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2020年11月号掲載
『一人称単数』は新しい村上春樹の短編集だ!
6年ぶりの短編集として刊行された村上春樹『一人称単数』(文藝春秋)には、8作品が収録されている。村上作品を体現するフレーズの一つ「やれやれ」は、今作では中ほどに所収の「「ヤクルト・スワローズ詩集」」...記事を見る »
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2020年10月号掲載
出会いの切実な瞬間を描く津村記久子の短編集
奇妙なことを言いだしたと思われるかもしれないが、小説の登場人物たちは、はたして普段本を読むのだろうか、ということを、津村記久子の短編集『サキの忘れ物』(新潮社)を読んでからずっと想像している。 〈こ...記事を見る »
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2020年9月号掲載
二〇二〇年上半期芥川賞候補作を総まくり!
三島由紀夫賞、山本周五郎賞は感染症拡大の影響を鑑みて、五月の選考を秋に延期したが、芥川賞、直木賞の選考は開始時刻を早めつつ、例年の日程で行われることになった。芥川賞は今回より、現時点では最年少となる...記事を見る »
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2020年8月号掲載
『持続可能な魂の利用』は現状認識の"実用書"である!
たとえば、雑誌の巻末やネット記事の合間に現れる、「Before」と「After」の写真を並べた美容商品の広告を、どれだけ目にしても何も感じないくらいに女性たちは慣れている。老化を害悪のように刷りこま...記事を見る »
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2020年7月号掲載
村上春樹から伊藤比呂美まで初夏のエッセイ祭り!
〈まだ何もしてゐないのに時代といふ牙が優しくわれ噛み殺す〉とは九〇年代はじめ、修辞を駆使した新しい世代の短歌を「ニューウェーブ」と名づけ、穂村弘らとともに、ニューウェーブ短歌の旗手の一人とされた荻原裕...記事を見る »
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2020年6月号掲載
今村夏子の三つの変身譚『木になった亜沙』
『文藝』二〇二〇年夏号(河出書房新社)には、「アジアの作家は新型コロナ禍にどう向き合うのか」という緊急特集が組まれ、六名の作家が寄稿している。中国を代表する作家のひとりである閻連科は冒頭にこう記す。〈...記事を見る »
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2020年5月号掲載
時代に対峙する李龍徳の剥き出しの文学
かつて自分にとって、いわゆる「在日文学」への入口となったのは、九七年に『家族シネマ』で芥川賞を受賞した柳美里であり、『血と骨』の梁石日であり、韓国の文化に親しみ、韓国文学を積極的に紹介した中上健次の...記事を見る »
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2020年4月号掲載
絲山秋子『御社のチャラ男』は会社員小説の金字塔である!
サラリーマン小説とも経済小説とも異なる「会社員小説」をひとつのジャンルととらえ、物語から炙りだされる「会社員」の姿をじっくり論じたのが、二〇一二年刊の伊井直行『会社員とは何者か? 会社員小説をめぐっ...記事を見る »
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2020年3月号掲載
『最高の任務』が描く心地よい景色に浸る
今回の芥川賞候補作は、『すばる』(集英社)から二作が選出された。候補に挙がるのは、『文學界』(文藝春秋)、『新潮』(新潮社)、『群像』(講談社)への発表作品である割合が高いので、珍しいのではと記録を...記事を見る »
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2020年2月号掲載
『リボンの男』でゆったり揺らぎを受け入れる
山崎ナオコーラ『リボンの男』(河出書房新社)は、川を歩く親子の場面からはじまる。川に落とした百円玉を探していることはすぐに明かされるが、〈「妹子ー、お金、ないねー」〉という冒頭、三歳児のタロウの台詞...記事を見る »
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2020年1月号掲載
生きていくことの理を問う青山七恵『私の家』
家には人がある。人は習慣を生み、習慣は記憶となって、身体の内に折りかさなり、そのくり返しが、いつしか時をおし進める。家という枠組みの中でくり広げられる、人々のさまざまな営みを幾重にもはりめぐらせなが...記事を見る »
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2019年12月号掲載
性と生を問い直す村田沙耶香『生命式』
村田沙耶香『生命式』(河出書房新社)には、二〇〇九年から二〇一八年までに発表された一二作の短編が収録されている。この間に野間文芸新人賞、三島由紀夫賞、芥川賞を受賞した著者の、代表作からこぼれた作品が...記事を見る »
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2019年11月号掲載
又吉直樹『人間』の熱量と切実さに震える!
かつて何者かになりたかったことを、誰もが過ぎたこととして語る。何者かになりたいという欲求は、子どもか若者のいっときの特権で、分別のついた大人はもうそんな夢は見ない。何者かになりたいとあがいた自分は無...記事を見る »
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2019年10月号掲載
早助よう子『ジョン』の自在な文体を堪能!
「韓国・フェミニズム・日本」と題した特集が話題の河出書房新社の文芸誌『文藝』二〇一九年秋季号は、三刷まで部数を伸ばした。発売後まもなく書店から消えてしまったのは、『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書...記事を見る »
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2019年9月号掲載
実力拮抗の芥川賞候補全作読破!
今回の芥川賞候補作を読みながら、妙な既視感にとらわれたのだが、過去の候補回をたどってわかった。今村夏子と古川真人、高山羽根子と古市憲寿、前作がそれぞれ同じ回で落選しているのだ。そうなると当然、前作を...記事を見る »
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2019年8月号掲載
産まれて死ぬことを抉る川上未映子『夏物語』
女性という性別で何十年生きていても、自分の身体のことがわからない。月経前の違和感や、陣痛の間隔が狭まる感じを体験として知っていても、そのとき体内で何が起きているのか、だるさや痛みをあらわす言葉でしか...記事を見る »
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2019年7月号掲載
破滅へと疾走する恋愛小説金原ひとみ『アタラクシア』
人間は愚かで、こんなにもどうしようもない生き物なのに、なぜ「誰か」を必要とするときにはこんなにも清らかで、愛しく見えてしまうのだろう。金原ひとみ『アタラクシア』(集英社)を読みながら、何度も天を仰い...記事を見る »
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2019年6月号掲載
豊饒な語りがつむぐ村田喜代子『飛族』に驚嘆!
村田喜代子『飛族』(文藝春秋)は、五島列島をモチーフにした架空の島々の猛々しい自然と、島にたった二人で暮らす老女の生活を書いた一作だ。娘のウミ子がいくら説得しても、92歳の母親イオは島を離れようとし...記事を見る »
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2019年5月号掲載
作家と二人の女性をめぐる静かで途方もない作品
人はなぜ書くのだろう、書くという行為はその人の何をあらわにするのだろう、そんな思いを抱かせる四冊が刊行された。 井上荒野『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版)は、著者の父親である作家の井上光晴とその妻...記事を見る »
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2019年4月号掲載
見えない「気付き」を描く長嶋有の短篇集
正月の浮ついた気分が日常を思い出したころ、橋本治の訃報を聞いて愕然とした。最後の時評集となった『思いつきで世界は進む──「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと』(ちくま新書)所収の「人が死ぬこと」...記事を見る »
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2019年3月号掲載
平成最後の芥川賞候補作総まくりだ!
なにかにつけて「平成最後」と頭に付くのが鬱陶しいが、今回の芥川賞も平成最後の選考と、いくつかのメディアが謳っている。では平成最初の芥川賞は? と調べてみたら、なんと受賞作なし。最後を強調する必要はな...記事を見る »
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2019年2月号掲載
苦悩と向きあう日上秀之の"自営業文学"
第55回文藝賞を受賞した日上秀之『はんぷくするもの』(河出書房新社)は、東北沿岸の赤街という集落で、三十歳を過ぎた毅とその母の営む仮設の商店が主な語りの場となる。かつての商店兼生家は津波で流され、借...記事を見る »
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2019年1月号掲載
らしさ"からときはなたれる『リトルガールズ』が美しい!
少し前のことになるが『すばる』五月号の「ぼくとフェミニズム」特集を興味深く読んだ。経歴も年齢も多様な31人の男性が「フェミニズム」について語る/表現する、という特集で、ここ最近の文芸誌の特集では群を...記事を見る »