新刊めったくたガイド
1978年6月発行の第9号からスタートした「本の雑誌」の看板コーナーが、WEB本の雑誌に登場!
石川美南 記事一覧
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2024年11月号
顔のない人々に寄り添うアダニーヤ・シブリーが凄い!
砂漠でギターを爪弾くと、その音は砂に吸い込まれてちっとも響かないのだという。かつて読んだそんな話を、背中に流れる冷たい汗と共に思い出した。 アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』(山本薫訳/河...記事を見る »
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2024年10月号
衝撃の〈少女〉小説で世界の深淵を覗き込む
今月は〈少女〉小説が豊作!と言っても、いわゆる「少女小説」のイメージとはかけ離れた、劇物揃いである。 イーユン・リー『ガチョウの本』(篠森ゆりこ訳/河出書房新社)の主人公は、フランスの農村に暮らす...記事を見る »
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2024年9月号
語りのマジックに身も心も委ねるのだ!
今月は傑作のオンパレード! まずはデイモン・ガルガット『約束』(宇佐川晶子訳/早川書房)。二〇二一年のブッカー賞受賞作である。 発端は一九八六年の南アフリカ、オランダ系白人であるスワート家の母親が...記事を見る »
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2024年8月号
シャッター音が聞こえ、物語はつづく
一枚の写真を前に、祖母がやさしく問いかける。 「これは、だあれ?」 「わたしよ!」と叫ぶ少女。しかし「わたし」とは一体誰なのか。そして、写真に写るもう一人の人物──母は、どうしてここにいないのか。 ...記事を見る »
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2024年7月号
年間ベスト級作品目白押し!(絵本もあるよ)
えっ、何どうしたの、と聞かれて気づいたら、本から上げたばかりの自分の顔が思いきりニヤニヤしていた。ケヴィン・ブロックマイヤー『いろいろな幽霊』(市田泉訳/東京創元社)は、幽霊が出てくる二ページほどの...記事を見る »
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2024年6月号
共感を超えてつながり合う痛みの国のアリスたち
思えばこの春、少し疲れていた。SNSの拡散の異様な早さ、共感に見せかけた自説の押し付け合い、インプレッション数を稼ぐための空虚なコメント......直接触れることのできない「コミュニケーション」の波...記事を見る »
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2024年5月号
いみじき春の奇人変人まつり!
やばいと噂には聞いていたが、本当にやばかった。ユーリー・マムレーエフ『穴持たずども』(松下隆志訳/白水社)。 冒頭、一九六〇年代のモスクワ郊外の描写、主人公の容姿の描写を漫然と目で追っていたら、わ...記事を見る »
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2024年4月号
楽園ははるか遠く......グルナ・コレクション開幕!
大商人の率いる隊商が、海岸の町から内陸へと旅を進めていく。その列の終わり近く、一人の美しい少年が、目を大きく見開いて周囲を観察している。 アブドゥルラザク・グルナ『楽園』(粟飯原文子訳/白水社)の...記事を見る »
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2024年3月号
死者生者入り乱れる狂騒の島にダイブ!
昨年末は外国文学が大豊作!中でも真っ先にご紹介したいのが、シェハン・カルナティラカ『マーリ・アルメイダの七つの月』(山北めぐみ訳/河出書房新社)だ。 舞台は一九九〇年、内戦中のスリランカ。物語は、...記事を見る »
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2024年2月号
「幽霊」たちに導かれ物語の深奥へ
幽霊に興味がある。と言っても実際に視たことはないし、いわゆる怪談を読み込んでいる訳でもない。小説に喩として現れる幽霊、物語を揺り動かす存在としての幽霊が気になるのだ。 モアメド・ムブガル・サール『...記事を見る »
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2024年1月号
『少女、女、ほか』が最高としか言いようがない
何の捻りもない感想で恐縮だが、バーナディン・エヴァリスト『少女、女、ほか』(渡辺佐智江訳/白水社)が、最高だった。まだ読み終わってもいないうちから、「すごくかっこいい小説があって、あなたのことを思い...記事を見る »
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2023年12月号
破格のページターナー『リンカーン・ハイウェイ』に没入!
アメリカで百万部超の大ヒット、バラク・オバマ絶賛、ビル・ゲイツも推薦......という華々しい宣伝文句に若干身構えながら手に取ったエイモア・トールズ『リンカーン・ハイウェイ』(宇佐川晶子訳/早川書房...記事を見る »
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2023年11月号
フランス、アルジェリア──その膨らみとひずみを読む
アンヌ・ベレスト『ポストカード』(田中裕子訳/早川書房)の始まりは二〇〇三年。作者アンヌの実家に、差出人不明のポストカードが届く。記されていたのは四人の親族の名前のみ。いずれも一九四二年、アウシュビ...記事を見る »
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2023年10月号
生きて未来を記憶する散歩文学の新たな名作!
散歩文学という一大ジャンルがある。今ぱっと思いつくだけでも、W・G・ゼーバルト『土星の環』に多和田葉子『百年の散歩』、最近話題になった高原英理『詩歌探偵フラヌール』やハン・ジョンウォン『詩と散策』、...記事を見る »
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2023年9月号
信頼できないのは語り手か、それとも?
エルナン・ディアズ『トラスト─絆/わが人生/追憶の記/未来─』(井上里訳/早川書房)を、夢中で読んだ。 まず、第一パート「絆」からして面白い。主人公ベンジャミン・ラスクは類まれな投資のセンスで一...記事を見る »
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2023年8月号
一〇〇一の断章で描く無限角形が胸を刺す
イスラエル人ラミ・エルハナンは、一三歳の娘を自爆テロで亡くした。パレスチナ人バッサム・アラミンの一〇歳の娘は、国境警備隊員が撃ったゴム弾によって命を落とした。ラミとバッサムはやがて友情で固く結ばれ、...記事を見る »
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2023年7月号
みんな大好きアリ・スミス! 短編で巡る奇妙な十二か月
楽しみに待っていたアリ・スミスの短編集『五月 その他の短篇』(岸本佐知子訳/河出書房新社)が出た。アリ・スミスと言えば、不思議な仕掛けが施された『両方になる』や、四季四部作などの長編も話題になったが...記事を見る »
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2023年6月号
五感全開で闇と向き合う『不快な夕闇』に震える!
最近は暇さえあれば外国文学を読んでいる私だが、一ページ目を開いた時点で「これは間違いなくすごいぞ!」と確信することは、それほど多くない。マリーケ・ルカス・ライネフェルト『不快な夕闇』(國森由美子訳/...記事を見る »
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2023年5月号
トロイアで・カリブで・米南部で沈黙を破る女たち!
いわゆる「#MeToo」運動や、女性のエンパワーメントを図る潮流と連動するように、外国文学の分野でも、沈黙を強いられてきた女性たちの声を拾い上げる快作が相次いで出版されている。新刊から三冊紹介したい...記事を見る »
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2023年4月号
ルーツを辿り、世界を手繰り寄せる『彼女はマリウポリからやってきた』が凄い
手元に残るのは、母の写った三枚の写真。それにウクライナの婚姻証明書と、ドイツの就労証明書のみ。ナターシャ・ヴォーディン『彼女はマリウポリからやってきた』(川東雅樹訳/白水社)は、ある日、半世紀以上前...記事を見る »
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2023年3月号
『絶縁』がつなぐ縁! アジア作家九人による濃密なアンソロジー
日韓同時発売のアンソロジー『絶縁』(小学館)が、濃い。当初は日韓競作の企画だったが、韓国の作家チョン・セランから「韓国と日本だけでなく、アジアの若手作家が同じタイトルで短編を書くのはどうか」と提案が...記事を見る »
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2023年2月号
絢爛たる比喩の千本ノック『パラディーソ』に溺れる!
ラテンアメリカ文学の伝説的作品として翻訳が待たれていたホセ・レサマ=リマ『パラディーソ』(旦敬介訳/国書刊行会)が、重い。内容の話ではない。物理的な重量のことだ。うちで計ってみたら九六二グラムあった...記事を見る »
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2023年1月号
エネルギッシュな中国小説怒濤の三冊読み比べ!
中国の過去や現在を鮮やかに照らす小説、しかもエネルギッシュですこぶる面白く、ページを繰る手が止まらない──。そんな触れ込みで勧めて回りたくなる本が、立て続けに三冊刊行された。いずれ劣らぬ読み応え、一...記事を見る »