新刊めったくたガイド
1978年6月発行の第9号からスタートした「本の雑誌」の看板コーナーが、WEB本の雑誌に登場!
酒井貞道 記事一覧
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2024年9月号
科捜研からスピンオフまで連作短篇集が熱い!
まずご紹介したいのは、岩井圭也『科捜研の砦』(KADOKAWA)だ。題名通り、沢口靖子のおかげですっかり人口に膾炙した感のある科捜研を扱っている。収録全四篇で探偵役を務めるのが、警視庁の科捜研トッ...記事を見る »
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2024年8月号
驚愕の展開が待ち受ける『詐欺師と詐欺師』が素晴らしい!
川瀬七緒のノンシリーズ長篇『詐欺師と詐欺師』(中央公論新社)は、女性詐欺師のバディものである。ただし関係性は対等とは言いがたい。一人称主人公である藍は最近帰国した凄腕の詐欺師だ。彼女と偶然知り合った...記事を見る »
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2024年7月号
サプライズに拘り抜いた歌野晶午の短篇集『それは令和のことでした、』
今月はどうしても触れざるを得ない作品が二冊ある。一つは歌野晶午『それは令和のことでした、』(祥伝社)だ。小説NONに連続掲載されたノンシリーズ短篇六本に書き下ろし短篇一本、ボーナストラック的な掌篇一...記事を見る »
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2024年6月号
意外性たっぷりの浅倉秋成の家族小説が素晴らしい!
家族の事を考えて何かを諦める。そうせざるを得ない状況は実際によくあるし、フィクションがそう落着する展開も、描き方にはよりますが基本的には良いものです。ただし、そこに必ずあるはずの個人の葛藤、苦悩、痛...記事を見る »
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2024年5月号
阿津川辰海『黄土館の殺人』の「外」と「内」の謎解きを堪能!
名探偵であるとはどういうことか。自らの存在意義をどこに見出すか。阿津川辰海《館四重奏》シリーズは、我が国の本格ミステリ作家が殊更追求するこのテーマに、クローズド・サークルと青春の自己実現を掛け合わせ...記事を見る »
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2024年4月号
西村健『不死鳥』でオダケン&ゆげ福が夢の共演だ!
『不死鳥』(講談社)は、新宿ゴールデン街でバーを営む「オダケン」と、福岡・中洲でとんこつラーメン店を営む「ゆげ福」という、西村健の二大シリーズの主人公が共演する。知人の娘を探しに上京したゆげ福は、福岡...記事を見る »
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2024年3月号
「音楽とは何か」を問う逸木裕『四重奏』を推す!
このミス大賞受賞作、白川尚史『ファラオの密室』(宝島社)の舞台は古代エジプトである。主人公はなんとミイラ。半年前の王墓崩落で命を落とした上級神官書記セティは、死後、女神マアトの審判を受けようとしてい...記事を見る »
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2024年2月号
高校生の誇りを賭けた独自ルールのゲームが楽しい!
青崎有吾『地雷グリコ』(KADOKAWA)は五篇から成る連作短篇だ。主役の女子高生射守矢真兎は、各篇でグリコ、神経衰弱、じゃんけん、だるまさんが転んだ、ポーカーといったゲームで、高校生なりに大切なも...記事を見る »
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2024年1月号
二人の元半ぐれが対峙する月村了衛『半暮刻』を一押しだ!
一九三六年生まれの志水辰夫が現代を舞台にハードボイルドを久しぶりに書いたのは驚きだった。その『負けくらべ』(小学館)では、主人公である初老の介護士・三谷孝が、一族支配の巨大企業グループ東輝の内部抗争...記事を見る »
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2023年12月号
見かけ通りにいかない今村昌弘『でぃすぺる』に驚愕!
『でぃすぺる』(文藝春秋)は、今村昌弘がその作家的出自をうまく利用した野心作である。主人公は架空の田舎、奥郷町に住む小学六年生のユースケ。彼は前委員長のサツキ、同級生のミナと共に、二学期の掲示板係に就...記事を見る »
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2023年11月号
呉勝浩『素敵な圧迫』はとんでもなく不穏な短篇集だ!
呉勝浩は、重厚な長篇で名を上げる一方、その作風と題材をカメレオンのように変えてきた。六年にわたり書き溜められたノンシリーズ短篇集『素敵な圧迫』(KADOKAWA)は、後者の特性が発揮され、ヴァラエテ...記事を見る »
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2023年10月号
シリーズ十七年ぶりの新作京極夏彦『鵼の碑』がベスト1だ!
今月は何を措いてもこれを紹介せずばなるまい、第一作にして京極夏彦のデビュー作『姑獲鳥の夏』から三十年。番外編を除けば前作に当たる第九長篇『邪魅の雫』から十七年。百鬼夜行シリーズの新作『鵼の碑』(講談...記事を見る »
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2023年9月号
恩田陸の新たな代表作をセットで読むべし!
今回は何よりもまず、恩田陸の野心作から評を始めねばなるまい。集英社から連月で刊行された恩田陸の『鈍色幻視行』と『夜果つるところ』は対を成す物語で、『夜果つるところ』は『鈍色幻視行』の核心となる作中作...記事を見る »
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2023年8月号
森川智喜の粒ぞろいの短編集『動くはずのない死体』をおススメ!
森川智喜『動くはずのない死体』(光文社)は、収録五篇がいずれも粒揃いで全てに触れざるを得ず、結果字数を食うという、ありがたくも嘆かわしい一冊である。冒頭の「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」は、...記事を見る »
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2023年7月号
衝撃度も情念もピカイチの『レモンと殺人鬼』をオススメ!
くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』(宝島社文庫)は『このミステリーがすごい!』大賞の文庫グランプリ受賞作である。小林姉妹は、十年前に、洋食屋を営んでいた父親が何者かに殺され、母親も失踪し、それ以後は貧し...記事を見る »
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2023年6月号
『SGU警視庁特別銃装班』の馬鹿でかいスケールに驚愕!
冲方丁の『SGU警視庁特別銃装班』(TOブックス)には驚かされた。本書で近未来の日本社会は、殺傷力の高い銃を装備した銀行強盗が横行するほど治安が悪化した、と設定されている。序盤で早速、強盗事件が発生...記事を見る »
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2023年5月号
夢の内外で展開する篠谷巧の技に油断禁物だ!
意識不明になった主人公の目を覚ますため、ヒロインが枕元で、高校時代に描かれた、主人公の黒歴史である連作漫画を大声で朗読する。共感性羞恥で読者にもダメージが入りかねないこの鬼畜の所業が、篠谷巧『君のい...記事を見る »
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2023年4月号
年度ベスト級のミステリ『木挽町のあだ討ち』を読むべし!
あらゆる要素が最終章で美しく収斂する、年度ベスト級のミステリが現れた。その永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮社)は、江戸時代を舞台とする時代小説だ。木挽町にある芝居小屋の裏手で、若侍・菊之助が博徒...記事を見る »
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2023年3月号
青崎有吾の短篇集『11文字の檻』に圧倒される!
『11文字の檻』(創元推理文庫)は、ミステリ作家・青崎有吾の、高密度で幅の広い芸風が読者を圧倒する。 最初の二本は、挨拶代わりの本格ミステリだ。「加速してゆく」は、JR西日本の福知山線脱線事故を題材...記事を見る »
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2023年2月号
米澤穂信『栞と嘘の季節』の不穏なコンビが愛しい!
十代の多感な若者が、切り札──人を殺せる猛毒を手に入れたらどうなるのか? 『栞と嘘の季節』(集英社)は、この問いを追求する。高校の図書委員、堀川と松倉は、図書室でトリカブト製の栞を見つける。校舎裏に...記事を見る »
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2023年1月号
辻堂ゆめ『君といた日の続き』のダメ押し展開がすごい!
《本の雑誌》読者の皆様、お久しぶりの方はお久しぶりです。今月から新刊国内ミステリのガイドを務める酒井貞道です。当ジャンルは今や百花繚乱、種類も豊富で、毎月目移り必至。一緒に楽しんでいきましょう。 で...記事を見る »