新刊めったくたガイド
1978年6月発行の第9号からスタートした「本の雑誌」の看板コーナーが、WEB本の雑誌に登場!
高頭佐和子 記事一覧
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2022年12月号
河﨑秋子『介護者D』に不意打ちされる!
涙腺は固い方なのだけれど、最後に不意打ちのような感情の揺れがきて、見事に崩壊した。河﨑秋子『介護者D』(朝日新聞出版)は、年を重ねて思うように動けなくなった家族がいる人なら、その切実さに平静に読めな...記事を見る »
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2022年11月号
"食べること"が苦痛な高校生と"吸血鬼"の青春小説
食べ物や料理が出てくる小説と言うと、描写が美味しそうで食欲がわくものだと思っていた。だけど、食=快楽と思わない人もいる。自分の思う当たり前を、他人に押し付けてきたかもしれない。そう考えるようになった...記事を見る »
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2022年10月号
情熱と青春てんこ盛りの村山由佳『星屑』に大満足!
村山由佳『星屑』(幻冬舎)は、スターを目指す少女たちの物語だ。「そういうキラキラした話は、今気分じゃないんだよなあ」と思ってしばらく放置していたことを告白しておく。とんだバカヤロウになるところであっ...記事を見る »
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2022年9月号
綿矢りさ『嫌いなら呼ぶなよ』に心底恐れ入った!
今月は短編集が熱い。個性と迫力ある作品たちにゾクゾクさせられた。まずは、綿矢りさ『嫌いなら呼ぶなよ』(河出書房新社)に心底恐れ入った。身近にいたら厄介な感じの、何かが過剰な人々を描いた四作品が収録さ...記事を見る »
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2022年8月号
村田沙耶香の短編集『信仰』に心を抉られる!
村田沙耶香『信仰』(文藝春秋)は驚愕の短編集だ。卓越した想像力によって構築された物語の中に入ると、目の前にある世界が揺らぐ。当たり前だと思っていた常識も、そこそこ自信のあった理性も、強固だと思ってい...記事を見る »
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2022年7月号
松波太郎『カルチャーセンター』で小説について考える
松波太郎『カルチャーセンター』(書肆侃侃房)は、小説を書く老若男女が集う教室の場面から始まる。ある生徒が書いた小説「万華鏡」について皆が多様な意見を述べる。「かなりキテる」「物語の吊り革にくらいつか...記事を見る »
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2022年6月号
セクハラ被害をリアルに描く井上荒野『生皮』
井上荒野『生皮』(朝日新聞出版)は、セクシャルハラスメントをめぐる小説である。どんな立場の人も、過去を振り返らずにはいられなくなるのではないか。忘れたい記憶、苦い後悔、封印した感情、見ないふりをした...記事を見る »
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2022年5月号
鈴木るりか『落花流水』の迷走する恋心が愛おしい!
鈴木るりか『落花流水』(小学館)の刊行が嬉しい。中学生でデビューした天才少女も、この春高校を卒業だそうだ。今回はおなじみの花実親子シリーズではなく、題名も装丁も渋めだ。ほろ苦い初恋?悩める青春?そん...記事を見る »
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2022年4月号
角田光代『タラント』は想像をはるかに超えた小説だ!
角田光代『タラント』(中央公論新社)について書く前に、まずは『源氏物語』の現代語訳という大きな仕事を、角田氏に依頼した編集者に感謝の意を表したいと思う。ありがとうございます! 全三巻の訳業を成し遂げ...記事を見る »
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2022年3月号掲載
町田康『男の愛』の清水次郎長にLOVE!
江國香織『ひとりでカラカサさしてゆく』(新潮社)は、八十代の男女三名が、バーラウンジに集い和やかに思い出を語り合う場面から始まる。かつて同じ出版社で働き、一緒にコンサートや映画に出かけ、転職したり遠...記事を見る »
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2022年2月号掲載
河﨑秋子『絞め殺しの樹』の迫力に圧倒される!
河﨑秋子『絞め殺しの樹』(小学館)は、タイトルが印象的だ。他の木に絡みつき、栄養を奪いながら締め付け、元の木を殺してしまう蔓性の植物をそう呼ぶのだという。 昭和十年、幼くして母と祖母を亡くし、新潟...記事を見る »
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2022年1月号
得体のしれない恐怖に侵食される辻村深月『闇祓』
怖いのは苦手だ。日常生活に侵食してくるタイプのホラー小説には、近寄らないようにしている。なのになぜ辻村深月『闇祓』(KADOKAWA)を手にしてしまったのか。 第一章の舞台は私立高校だ。優等生タイ...記事を見る »
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2021年11月号掲載
理不尽の連続に立ち向かう中島京子『やさしい猫』
中島京子『やさしい猫』(中央公論新社)は、二人の男女が出会い、家族になろうとする過程を描いた小説だ。大切に思う相手と一緒に人生を送りたい。ただそれだけなのに、恋人たちは大きな力によって引き裂かれそう...記事を見る »
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2021年10月号掲載
小説を書くことの意味を問う『翡翠色の海へうたう』
深沢潮『翡翠色の海へうたう』(KADOKAWA)は、存在を認められずに生きる人々について書かれた小説だ。小説を書くことの意味に、真摯に向き合った作品でもある。 主人公の葉奈は三十代の女性だ。家族か...記事を見る »
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2021年9月号掲載
本谷有希子の冷徹な描写に揺さぶられる!
本谷有希子『あなたにオススメの』(講談社)には、二篇の小説が収められている。どちらも底意地が悪い。冷徹な人間描写で、読み手の心に容赦なく揺さぶりをかけてくる。 最初の作品「推子のデフォルト」の舞台...記事を見る »
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2021年8月号掲載
山下紘加『エラー』に内臓を乗っ取られる!
山下紘加『エラー』(河出書房新社)は新鮮な驚きに溢れる一冊だ。主人公はフードファイターである。あまり興味がわかない職業だ。食べ物は味わっていただくべき、という考えの私としては、嫌悪感すらあったのだが...記事を見る »
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2021年7月号掲載
ゴッホの自殺の謎を追う原田マハ『リボルバー』
原田マハ『リボルバー』(幻冬舎)は、ゴッホの物語である。著者は『たゆたえども沈まず』(幻冬舎文庫)で、ゴッホの生きた時代を舞台にした物語を既に描いているが、この新作に本人は登場しない。偉大な画家を巡...記事を見る »
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2021年6月号掲載
辛酸なめ子『電車のおじさん』に取り込まれる!
辛酸なめ子『電車のおじさん』(小学館)は、不思議な小説だ。笑いながら読んでいるうちに、気がつくと主人公の世界観に取り込まれている。 文具メーカーに勤める玉恵は、混雑する総武線で迷惑行為をするおじさ...記事を見る »
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2021年5月号掲載
朝井リョウ『正欲』にぶん殴られる!
今月はまず朝井リョウ『正欲』(新潮社)について書かなくてはならない。ざらざらした紙やすりのような小説だ。取り繕った表面を削り取り、心の内側に隠しているものを曝け出してしまう。人と共有しづらい経験や欲...記事を見る »
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2021年4月号掲載
『料理なんて愛なんて』にグサグサ心をエグられる!
佐々木愛『料理なんて愛なんて』(文藝春秋)は、予想と違う展開に驚かされる一冊だ。デビュー作『プルースト効果の実験と結果』(文藝春秋)での繊細な心理描写もすばらしかったが、二作目となるこの作品で新たな...記事を見る »
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2021年3月号掲載
藤野千夜『じい散歩』にじわじわ心が温まる!
平日の昼間に外出すると、高齢男性が一人で散歩している姿をよく見かける。ファッションは、かなりの確率で帽子に肩掛けバッグだ。ほぼ全員がかの名優・地井武男氏が出演していた人気番組「ちい散歩」を見ていたの...記事を見る »
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2021年2月号掲載
『私を月に連れてって』の歪みない視線にハッとする
鈴木るりか『私を月に連れてって』(小学館)の刊行が嬉しい。二〇一七年に中学生作家としてデビューし、毎年十月に田中花実親子のシリーズを発表してきた著者だが、今年は刊行されなかった。学業が忙しいのか、も...記事を見る »
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2021年1月号掲載
過去を突きつけてくる吉田修一『湖の女たち』
二〇二〇年を、「コロナと『日没』の年」と名付けたい。得体の知れない何かがじわじわ近づいてきて、気がつくとその渦中にいる。未体験の恐怖に、心を侵食された記憶が後々まで残りそうだ。既に多くの書評で絶賛さ...記事を見る »