新刊めったくたガイド
1978年6月発行の第9号からスタートした「本の雑誌」の看板コーナーが、WEB本の雑誌に登場!
林さかな 記事一覧
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2020年12月号掲載
『神さまの貨物』が伝える戦争の影と命の光
『神さまの貨物』(ジャン=クロード・グランベール/河野万里子訳/ポプラ社)には、これがあったら生きていけると思える幸福感が書かれている。けれど甘い話ではない。おとぎ話の体で戦争の残酷さを描く厳しい物語...記事を見る »
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2020年11月号掲載
"見えない存在"に光を当てる『サブリナとコリーナ』
コロナ禍で外出することがかなり減ってしまい、自分の世界がどんどん小さくなるような今、小説を読むと少し見える範囲が広がる。 『サブリナとコリーナ』(カリ・ファハルド=アンスタイン/小竹由美子訳/新潮社...記事を見る »
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2020年10月号掲載
四世代にわたる家族物語『パチンコ』がすごい!
『パチンコ』(ミン・ジン・リー/池田真紀子訳/文藝春秋)は四世代にわたる家族物語。アメリカで百万部を突破したベストセラーであり、全米図書賞の最終候補作でもあり、読書家で知られるオバマ前大統領の愛読書と...記事を見る »
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2020年9月号掲載
失われつつあった言語で生み出された小説
『アコーディオン弾きの息子』(ベルナルド・アチャガ/金子奈美訳/新潮社)は、バスクの農村部と思われる架空の土地オババを舞台に、そこで育ったダビとヨシェバを中心とした枠物語になっている。 作家として成...記事を見る »
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2020年8月号掲載
美しい光を放つ短篇集『蜜のように甘く』
ページに連なる言葉にとろけるような至福を味わった。『蜜のように甘く』(イーディス・パールマン/古屋美登里訳/亜紀書房)は誰しもにおとずれる日常の美しい輪郭を、言葉で彫刻するように見せてくれる短篇集。...記事を見る »
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2020年7月号掲載
『セヘルが見なかった夜明け』に胸をえぐられる!
東京は下北沢にある「B&B」は、地方にいる私も何度かイベントで訪れている書店。ここで始まった取組はオンラインストアでデジタルプレスを扱うこと。外出自粛で通販の需要が増えている中でデジタルだと物理的な...記事を見る »
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2020年6月号掲載
力強い声で語られる家族の物語
『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』(ジェスミン・ウォード/石川由美子訳/作品社)は、力強い声で語られる小説。その声を聞いていると、いま毎日定期的に発表される数字につのる不安を忘れ、小説世界にぐんと引っ張...記事を見る »
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2020年5月号掲載
『サンセット・パーク』の四人の若者と語らう
自然災害が続き、まだ傷跡も癒えない中、今度は世界中で疾病が広がり、パンデミックと宣言された。見えない先を思うと気が重くなるがまずは落ち着こうと思う。 『サンセット・パーク』(ポール・オースター/柴田...記事を見る »
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2020年4月号掲載
ル=グウィンのクリアな思考に圧倒される!
『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ』(アーシュラ・K・ル=グウィン/谷垣暁美訳/河出書房新社)の表紙写真は、公式サイトにずっと置かれていた本人の画像。本書は生前最...記事を見る »
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2020年3月号掲載
内戦の街から自由な場への二人の歩み
人は自分の眼でみたもの以外はなかなか腑に落ちない。国内の事件ですら、住んでいる所以外だと他人事になる。東日本大震災が起きて数年後、四国の観光地を歩いている時に、地元の人に「どちらからいらしたんですか...記事を見る »
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2020年2月号掲載
知らない世界の文学に分け入る傑作短篇集
『ポルトガル短篇小説傑作選』(ルイ・ズィンク+黒澤直俊編/現代企画室)は質の高い正確な訳文で現代のポルトガル文学を紹介する企画で編まれたもの。十二の短篇を七人で翻訳している。ポルトガルのタイル、アズレ...記事を見る »
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2020年1月号掲載
『ヒア・アイ・アム』が語る私たちの人生
小説を読めば読むほど、書かれていることの多くは人生のことだと感じる。これは自分のことを書いているのだと親近感をもち、どこの家にもおきていることなのだと納得する。『ヒア・アイ・アム』(ジョナサン・サフ...記事を見る »
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2019年12月号掲載
リアルでへんてこなエトガル・ケレットの短編集
夜半、人が訪ねてくることはない時間帯にチャイムが鳴った。警察の人が「雨が強まっていて危険なので避難してください」と注意喚起しに来た。そんなことはこの家に住んで初めてで、緊張の一夜を過ごしたせいか、翌...記事を見る »
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2019年11月号掲載
新しい人生の扉を開く『きのこのなぐさめ』
No Mushroom, No Life. 背表紙の帯に書かれているとおり本書『きのこのなぐさめ』(ロン・リット・ウーン/枇谷玲子・中村冬美訳/みすず書房)は、きのこが人生を取りもどしてくれた物語。...記事を見る »
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2019年10月号掲載
思わず噴き出す短篇集『黒い豚の毛、白い豚の毛』
ハラハラしたり、噴き出してしまったりと楽しませてもらったのが、ノーベル文学賞候補と注目されている作家、閻連科の自選短篇集『黒い豚の毛、白い豚の毛』(谷川毅訳/河出書房新社)。九つの短篇が収められてい...記事を見る »
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2019年9月号掲載
孤独を感じた時に読む『掃除婦のための手引き書』
ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』(岸本佐知子訳/講談社)は人生で孤独を感じた時に読みたくなる短篇集。最小単位の家族からはじまり、誰かしらが近くにいたとしても、最後はひとりで死んでいく。年齢...記事を見る »
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2019年8月号掲載
生き抜く力を失わない『三人の逞しい女』
今年の一月から四月にかけてNHKラジオ「こころをよむ」で小野正嗣さんによる『歓待する文学』が放送され、テキストも購入して毎回楽しみに聞いていた。その中で小野さんが翻訳中のマリー・ンディアイの『三人の...記事を見る »
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2019年7月号掲載
フランゼン『ピュリティ』のずっしり八百ページを堪能!
『ピュリティ』(ジョナサン・フランゼン/岩瀬徳子訳/早川書房)は八百ページ超の小説なので重みも中身もずっしりしているが、語り口がよく読みやすい。大学を卒業し多額の奨学金ローンを抱えている主人公のピップ...記事を見る »
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2019年6月号掲載
濃くておもしろい中南米文学アンソロジー
およそ三十年の時間をかけて編訳された『20世紀ラテンアメリカ短篇選』(野谷文昭編訳/岩波文庫)は濃くておもしろい中南米文学が十六編収められている。あざやかな黄色が目にとびこんでくる表紙絵はディエゴ・...記事を見る »
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2019年5月号掲載
どんどん厚くおもしろくなっていく『ニックス』に大満足!
ネイサン・ヒルの『ニックス』(佐々田雅子訳/早川書房)は、作者のデビュー長編作品。二段組七百頁強のボリュームは辞書並の存在感があり、帯にはジョン・アーヴィング絶賛と書かれている。 主人公サミュエル...記事を見る »
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2019年4月号掲載
家族を全て失った著者の七年の歳月
二〇〇四年十二月二十六日、スマトラ沖で発生した巨大地震による大津波がスリランカを襲い、休暇を過ごしていた多くの人が波に巻き込まれた。『波』(ソナーリ・デラニヤガラ/佐藤澄子訳/新潮社)は、二人の幼い...記事を見る »
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2019年3月号掲載
六歳の少年が語る喪失『おやすみの歌が消えて』
六歳の主人公ザックの語りで長編小説を上梓したリアノン・ネイヴィン。『おやすみの歌が消えて』(越前敏弥訳/集英社)は彼女のデビュー作だ。 ザックの小学校に「じゅうげき犯」がきた。最悪なことに、兄のア...記事を見る »
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2019年2月号掲載
マンローのデビュー短篇集『ピアノ・レッスン』が出た!
ノーベル文学賞作家アリス・マンローのデビュー短篇集『ピアノ・レッスン』(小竹由美子訳/新潮社)が刊行された。翻訳文学のおもしろいところに、日本で刊行される順番がある。自国では最初に刊行されるデビュー...記事を見る »
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2019年1月号掲載
気持ちがにぎやかに揺れ動く51人の物語
主人公のいない小説、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子/亜紀書房)は五十一人の登場人物が出てくるので、実際はタイトルより一人多い。作者が書きすぎてしまったのだが、おさまりのいい数字を...記事を見る »