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連載第55回

ピンクのハリーをたくさん並べながら、あぁ来週は村上春樹が出るんだなぁ、なんてことを思っていたのも随分遠い昔の話となってしまいました。12月も目の前になった現在、もちろん街の噂どおり、ハリーよりも『アフターダーク』の方が今も売れております。が、が、が、初日に全国的にあんなに売れる本もないんですよ、とか、これ以上誰に読ませるんですか、ハリーのシリーズを!(とはいえ、軽い版1巻目もちょっと売れてた)、とか、いろいろ思っていたのですが、誰に言うともなしに日が過ぎてしまいました。「大人になると日がたつのが速い」なんて昔言われたときは「へぇ、そんなもんですか」と思ってましたが、実際速いのでびっくりですよね。

と、怠慢の言い訳はともかく。(そして、お隣のながしまさんが激動してるのにびっくりしつつ)

この間、印象的だった新刊といえば『真っ黒館』(綾辻行人)やら『生首』(法月輪太郎)やら『長いお別れ』(『Wrong Goodbye』だって)とかの発売でしょうか。いつも話題になりそうな本が出るときは「隣に何を並べようかしらん」と悩んだりしますが、この秋はバカの一つ覚えのように、それぞれの出演者の過去の作品を並べたりしておりました。怠慢? いえいえ、これが結構売れたのですよ。『十角館の殺人』など特に。実際、私も館シリーズ大人買い&まとめ読みにトライしてみましたが、毎日読むものに迷わない!とか発売日が待ち遠しくなる!とかいろいろ効能がありましたよ。それに探偵ものはまとめ読みに限りますよ(人の名前を覚えていられないから)って、そういう人だけじゃなくって、どれも久しぶりの新作ということもあり、シリーズ自体初めて手に取る方も多かった模様です。

ただ、この中で一番好きな二村のシリーズは品切れのため過去の作品が一緒に売れないというのは非常に残念。(一番売りたかった)

そういえば先日、店頭でお客さんが「へぇ~『アフターダーク』の人ってこんなにいっぱい本が出てるんだ」などとおっしゃってるのを耳にいたしました。なんというか、ここ何年も本屋店員でいすぎたせいか、ちょっとばかし「本を買って次の本に広がる楽しみ」みたいな部分のことを難しく考えすぎてたかもな~と反省をしました。
だからって、簡単なことばかりじゃつまらないんですけど。


話、かわって。

地震、すごかったですね。

たまたま家におりまして、とっさに近くの棚が倒れてこないよう手で押さえたのですが、押さえながら、これが倒れなかったとしても、この右にあるのと左にあるのが倒れてきたらどうなるんだ?とオノレの考えのなさに揺れている最中ずっと唖然としておりましたよ。幸い、ぎっしり詰まってるせいか、落ちたり、倒れたりもなくすみましたが、次からは何もかも見捨てて玄関に行こうと心に誓いました。(で、直後にまた揺れたので、誓いは守られる)

いや、そんなアレはともかく。家にいても逃げ場なし、と恐怖を感じるのですから、店で働いてる時にのっぴきならないことにはなりたくないなぁ、などと。店頭にいて、店員である以上、わが身の安全ももちろん、お客さんの安全も考えなければならないのですから、なかなか大変な話です。噂では今回の地震の際「近くの棚から離れてください」と店内放送が入った大型書店もあったらしい、と聞きました。右往左往しないで、そんな放送が入れられるような店員になれる日は私にくるのでしょうか? とちょっと考えてしまいましたよ。

あと、もし会社で震災にあい、そのまま避難生活に入ったとしてですね。コンタクトの水って支給されたりしないよな、と報道を見て思ったりもしました。先のこともわからず、目も見えない恐怖。


えー、新潟の視力のない本好きの方のご無事を、今も祈っております。
ではでは。

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