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連載第37回

オーストラリア第一回

一つ年上の私のいとこがオーストラリアはケアンズで結婚式を挙げることになり、ひょこひょこと参加してまいりました。ダンナも行くかと誘ったところ、「ゴールデンウィークなんて時期に売場を離れるわけにはいきません」といい子な返事。確かに本屋に限らず小売業は休みの日が稼ぎ時ですからね。しかし、今年はかなりの飛び石。荷物はそう止まらないと見た、などなど、自分を安心させる呪文をいくつか唱え、一週間の休みへ、いざ。

といいつつも、4月は売場業務に加えて、チーフ業(書類回収・作成、アルバイトの面接、サイン会の立ち会いなどなど)が加わった余波もあり、ゴールデン対策はおろか、通常の売場業務遂行もおぼつかず、かなりのよたれっぷり。サイン会も通常月の二倍くらいあり、売場のアルバイトも半数は新人。バックヤードで文庫のバラ段ボール(各社の棚用の補充品がバラバラに入っているのです)を毎週末仕分けながら、旅行は無理かもと気が遠くなっていたものです。

旅行気分を盛り上げようと、手帳にそっと、水着・日焼け止め・帽子などと、書き込んでるウチはまだ余裕が。売場の発注進行状況も担当アルバイトとすれ違いが続き上手く確認が取れず。バックヤードに残った売場に出し切れない荷物を見ながら、みんなの状況を考える、なんてちょっと、野生動物追跡みたいな気持ちになりながら、指示メモを作っていたのですが、それももう間に合わず。とうとう、電車の中で文庫担当必殺心構えノート(“できれば”とか“前向きに”とか頻出してるのが、自分でもおかしかった)を書いたり、と一週間前はかなりのドタバタ。

出発の三日前くらいに換金とスケジュールの確認をし、持ってく本を選ぶ所まで、ようやくこぎ着け、ちょっとホッと(というか、いろいろ諦めた)。

ちなみに持ってこうと思った本はコレ。(本選びをしているウチに、家にある本の仕分け、片づけ気分が盛り上がり、妊娠中の友人に無理におもしろかった本を送り付けたりもした。その中に舞城王太郎の「九十九十九」講談社ノベルスを入れたのは大きな失敗だったと反省中)

移動中は評伝・短編がいいかしらと古本で買っていた、ちくま文庫「ルー・サロメ 愛と生涯」、文春「闘う白鳥 マイヤ・プリセツカヤ自伝」(読み終わったら母にあげればいいし)、筑摩「狂書目録」柾木高司などなど。

それに、グレートバリアリーフだ、ビーチでリゾートって言うなら、ミステリー小説をけだるく読まなきゃだろう、一冊は入れよう、と新潮文庫の「謎のギャラリー」シリーズ(一冊じゃないし)、文春文庫の「壊人」レックス・ミラーって、けだるく読めないじゃん。

それから、それから、一週間も空き時間があるなら(って、この時点で結婚式・観光とあるのはすっかり抜けてる)買ってそのままだったり、ちょっと読んで満足のアレコレを片すチャンス。と家の山を崩して引っ張りだしたのがグレアム・スウィフト「ウォーター・ランド」新潮クレスト(これを見るたび、旅行で読み切ったという達成感を思いだすんだわ)、これもクレストの「灰色の輝ける贈り物」アリステア・マクラウド(心穏やかな時に読みたいと暖めていた、と言えば聞こえはいいけど、読むの忘れてた)、あと、いまいち乗り切れなくってほったらかしてた、イスマイル・カダレ「夢宮殿」、アレン・カーズワイル「驚異の発明家の形見函」どちらも東京創元社、にラファティ「地球礁」河出、などなど。

以上+実際持っていった本をトランクの前に積み上げたところで、満足し、後の準備はロクにしないまま、前日を迎える。

で、実際に持っていったのはコレ。
ジョン・バース「ストーリーを続けよう」みすず、高橋克彦「火炎」講談社文庫、マイケル・ムアコック「グローリ・アーナ」創元文庫、ダン・ローズ「ティモレオン」アンドリュース・クリエイティヴ、ティボール・フィッシャー「コレクター蒐集」東京創元社、須賀敦子「塩一トンの読書」河出書房

やっぱり、実際厳選すると、色気が出るようで、新刊中心になりました。
って、今回持ってかなかったアレコレ、いつ読めるんだろうか。

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