新刊めったくたガイド
1978年6月発行の第9号からスタートした「本の雑誌」の看板コーナーが、WEB本の雑誌に登場!
藤ふくろう 記事一覧
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2022年12月号
記憶の儚さとしぶとさを描くE・ラスコヴィッチ『アイダホ』
忘れたくなるほどつらい喪失の記憶を、忘れるがままにしておくか、それとも忘却の淵からすくい上げるか。この問いに向かい合う小説、エミリー・ラスコヴィッチ『アイダホ』(小竹由美子訳/白水社)が突き刺さった...記事を見る »
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2022年11月号
威風堂々のブラック労働コメディ『愚か者同盟』に笑う!
ピュリツァー賞を受賞した労働ブラックコメディ小説、ジョン・ケネディ・トゥール『愚か者同盟』(木原善彦訳/国書刊行会)の、威風堂々たるブラック労働者ぶりに感心した。1960年代アメリカを舞台に、大学卒...記事を見る »
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2022年10月号
ヘビー級の家族小説2連発だ!
ヘビー級の家族小説が豊作だった。まずは、黄金採掘の夢を見た中国系移民一家を描く、C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房)。舞台は、ゴールドラッシュ後のアメリカ西部。中国系移民2世の...記事を見る »
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2022年9月号
2022年の夏ガイブンはリリアンと双子でスタート!
2022年の夏ガイブン(夏に読みたい海外文学)にぴったりの小説、ケヴィン・ウィルソン『リリアンと燃える双子の終わらない夏』(芹澤恵訳/集英社)はタイトルどおり、リリアンと物理的に燃える特異体質の双子...記事を見る »
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2022年8月号
生命と人生の豊饒を語る大作パワーズ『黄金虫変奏曲』
リチャード・パワーズによる噂の大作『黄金虫変奏曲』(森慎一郎・若島正訳/みすず書房)が、ついに刊行された。4つの塩基から膨大で多様な生命を織り上げる遺伝子と、その謎を解読しようとする生物学を主軸に、...記事を見る »
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2022年7月号
愛と苦しみが混じり合う『シャギー・ベイン』の強烈な輝き
初邦訳作品の『掃除婦のための手引き書』が大反響を呼び起こしたルシア・ベルリンの短編集、『すべての月、すべての年』(岸本佐知子訳/講談社)がやってきた。ベルリンの短編は、ぱっと描かれる風景や会話が鮮や...記事を見る »
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2022年6月号
『ケンジントン公園』の狂躁的な語りに溺れる!
現代韓国を代表する作家のひとり、ファン・ジョンウンによる『年年歳歳』(斎藤真理子訳/河出書房新社)は、母娘二世代の女性たちがそれぞれ抱える生きづらさをめぐる物語である。まず、娘たちの生きづらさが語ら...記事を見る »
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2022年5月号
革命と物語文化が融合した血と涙のアラベスク
ショクーフェ・アーザル『スモモの木の啓示』(堤幸訳/白水社)は、イラン革命の暴力とイランの物語文化が融合した、濃密なイラン文学だ。語り手は、13歳のイラン人少女。物語は、少女の兄がイラン革命の影響で...記事を見る »
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2022年4月号
悪趣味王のヒッチハイク記で腹の底から呵々大笑!
ひさびさに、腹の底から大笑いできる海外文学を読んだ。ジョン・ウォーターズ『ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク』(柳下毅一郎訳/国書刊行会)は、「悪趣味(バッドテイスト)の王」と呼ば...記事を見る »
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2022年3月号掲載
人間の感情ヘドロをえぐり出す『壁の向こうへ続く道』
日常に溶けこむ幻想を描くアルゼンチンの作家、シルビナ・オカンポの短編集が2冊、ほぼ同時に刊行された。『蛇口 オカンポ短篇選』(松本健二訳/東宣出版)は、オカンポ全作品の中から訳者が選んだオリジナル短...記事を見る »
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2022年2月号掲載
"反逆者"外交官の生涯を描くとてつもなく濃密な小説
とてつもなく濃密な小説を読んでしまった。ペルーのノーベル文学賞受賞作家、マリオ・バルガス=リョサによる『ケルト人の夢』(野谷文昭訳/岩波書店)は、"人権活動家"であり"反逆者"でもあった実在の英国外...記事を見る »
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2022年1月号
アンソロジー『ヌマヌマ』の濃厚で多彩なロシアに沈む!
タイトルが出た時「これは読まなければ」と直感し、書影が公開された時には「なるほど、これはやばいやつ」と確信した本がある。沼野充義・沼野恭子編訳『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』...記事を見る »
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2021年12月号掲載
ディープな家族小説『サワー・ハート』に溺れる
2021年ノーベル文学賞を受賞したアブドゥルラザク・グルナは、タンザニアの政治混乱を逃れて英国に渡り、英語で執筆する作家だ。海外文学の新刊でも、移住先の言語で書く作家たちの作品が目にとまった。 ジ...記事を見る »
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2021年11月号掲載
比類なき円錐小説ベルンハルト『推敲』に大満足!
比類なき円錐小説、比類なき最高円錐小説、比類なき最高ベルンハルト円錐小説、トーマス・ベルンハルト『推敲』(飯島雄太郎訳/河出書房新社)が忘れられない。この円錐小説には、狂気をはらんだ二人の男が登場す...記事を見る »
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2021年10月号掲載
『蛇の言葉を話した男』に眉間を撃ち抜かれる!
ファンタジーど真ん中でありながら、ファンタジーの眉間を撃ち抜こうとする、恐るべき小説がエストニアからやってきた。アンドルス・キヴィラフク『蛇の言葉を話した男』(関口涼子訳/河出書房新社)について言い...記事を見る »
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2021年9月号掲載
血と情念が燃え上がるヨクナパトーファ・サーガの原点
われらが立つこの小さな場所こそが、世界そのもの、宇宙そのものだ、と語る小説家たちがいる。ウィリアム・フォークナーは、アメリカ南部の町ヨクナパトーファを舞台に、宇宙を構築した。ウィリアム・フォークナー...記事を見る »
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2021年8月号掲載
ヤバイやつらが跋扈するピンチョン世界へようこそ!
ついにきた。トマス・ピンチョン全小説の最終巻、唯一の未邦訳作品、トマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』(佐藤良明・栩木玲子訳/新潮社)がついに刊行された。76歳の作家が描くのは「インターネット...記事を見る »
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2021年7月号掲載
夫婦共著の奇談小説『爆弾魔』がすばらしい!
R・L・スティーヴンソン&ファニー・スティーヴンソン『爆弾魔 続・新アラビア夜話』(南條竹則訳/国書刊行会)が面白い。19世紀英国を舞台に、心躍る冒険を求める3人のボンクラ紳士たちが爆弾テロリストに...記事を見る »
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2021年6月号掲載
終末世界を旅する二冊のパンデミック文学
疫病が広がる終末世界で、生存者が旅するパンデミック文学が2冊、刊行された。1冊は、中国系アメリカ人リン・マーの『断絶』(藤井光訳/白水社)。中国深圳で発生した未知の病気「シェン熱」が世界を襲う。ニュ...記事を見る »
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2021年5月号掲載
設定オタクの大ペテン師サルマナザールの奇書
かつてヨーロッパに、台湾と日本について大ボラを吹きまくったペテン師がいた。ジョージ・サルマナザール『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史』(原田範行訳/平凡社ライブラリー)は、18世紀ヨーロッパのアジア...記事を見る »
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2021年4月号掲載
力強い声と言葉に満ちた『ゼアゼア』を読め!
「語られてこなかった者たちの物語」を語る現代アメリカ文学の流れにおいて、重要な作品が翻訳された。トミー・オレンジ『ゼアゼア』(加藤有佳織訳/五月書房新社)は、土地を奪われたアメリカ先住民の子孫、都市イ...記事を見る »
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2021年3月号掲載
前門のストーカー、後門の同調圧力『ミルクマン』
皆と同じだと「普通」で、少しでもズレたことをすれば「普通じゃない」と集中攻撃と排除の対象になる。そんな閉鎖的社会の暗黒に、ストーカーという暗黒を掛け合わせた「暗黒特盛り小説」が、アイルランドからやっ...記事を見る »
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2021年2月号掲載
ごはん文学! 韓国文学!『きょうの肴なに食べよう?』
人がふたり以上集まれば、自然と食事の話になる。食事の話は、話すのも聞くのも、書くのも読むのも楽しい。だから海外ごはん文学の話をしよう。カルミネ・アバーテ『海と山のオムレツ』(関口英子訳/新潮社)は、...記事を見る »
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2021年1月号掲載
男尊女卑の地獄に風穴を開けるシスターフッド小説『誓願』
2016年アメリカ大統領選挙で話題になったディストピア小説『侍女の物語』の続編、マーガレット・アトウッド『誓願』(鴻巣友季子訳/早川書房)が、2020年アメリカ大統領選挙の時期に刊行された。"超保守...記事を見る »