WEB本の雑誌

第4回

 松本の春がこんなに短いとは思いませんでした。4月中旬、桜がやっとほころび始めて、ようやく昼間は長袖1枚でも大丈夫になってきたかな、と思ったのもつかの間。ゴールデンウィークが終わったらもう初夏になってました……。何、ここの春って2週間しかないの!? 厚いフリース脱いだと思ったら速攻半袖Tシャツに衣替えですよ。極端すぎ。

 しかし、ここの初夏は感動モノでした。まさに天国。ああ、湿気がないってこんなに快適なのね。桜並木の新芽はあっという間に伸びて青々とした葉を茂らせ、ほんの1ヶ月前まで枯れ木だったのがうそのよう。吹き抜ける風は爽やか、雨天の日はほとんどなく、日差しは新緑の間から毎日まぶしく降り注ぎ、しかも朝晩はまるで高原のような涼しさ。カイトと街中を歩いていて、すぐそばの庭からかっこうの鳴き声が聞こえたときは本当に驚きました。都会の人間にとっては、かっこうって山や湖に行かないと出会えないものだという意識があったので。

 そんな中、カイトは突然絵本にハマり始めました。それまではおもちゃ箱に入ってたりしてもあまり興味を示さず、たまに読んであげても自分でばばばっとページをめくるのが楽しいだけのようで、私の朗読はまるで無視。「読みきかせ」という行為には程遠かったのです。が、最近は絵本をじっと見つめ、自分のわかるものを指差して「おさら」とか「おせんべ」などとさかんに口に出して言うようになりました。おお、すごい進歩だ! そうか、今までは絵の意味がわかってなかったのかもしれないな。ま、言うまでもなく、火付け役はアンパンマンだったのですがね(笑)。キャラを指差して名前を言うのは大得意。

 中でもお気に入りの絵本は、福音館の「くまくんシリーズ」。『おふろだ、おふろだ!』『いただきまあす』『こんにちは』など。ちょうど主人公のくまくんが、カイトと同じくらいのレベルなので、親近感があるみたいで。絵本を私のところに持ってきて、読め読めとせっつくのですよ。わあ、うれしいなあ~。ママ、子供に絵本を読んであげるのがひそかな夢だったのよ! これ、実は読んであげる親のほうもすっごく楽しいんですよね。まさに至福の時間。

 上のお姉ちゃんの時は私も働いてたから、夜はいつも戦争状態で、ゆっくり本を読んであげるヒマがなくて、それがすごく心残りだったのですよ。そのうち、彼女はさっさと自分で読めるようになってしまい、「ママに読んでもらうより自分のペースで読むほうがいいから」と、あっさり拒否。そ、そんなあ~。まあ自業自得なんですが。

 カイトは図書館の児童室で絵本を見るのも大好きで、いつも私が図書館に本を借りに行くと、必ず腕をぐいぐいひっぱって、畳敷きの児童室に突進。棚からどんどん絵本を出しては「これは?これはなに?」と聞いてきます。私が大喜びで読んであげると、2、3ページですぐ飽きて別の本を出してくるのが玉にキズなんですがね……ちゃんと最後まで聞けってばよ。まあいいか、本に興味を持ってくれただけでもね。

 また、めきめきとしゃべる言葉が増えてきたのが楽しい。「さんきゅー」「あ、そっか」「たしゅけてー」「つぎはねー」「えっとねー」などなど。しかしそれを聞いていたダンナ、「全部ママのまねっこだな」ええっ!?マジ?私いつもこんなことしゃべってるの? 「うん、口調がそっくりだよ」そ、そうだったのか……全然知らなかった。しかし先日、寝言で「ドキンちゃん……」とつぶやいてたのにはバカウケしてしまった。夢の中でもアンパンマンなのかキミは!

 イタズラも更に加速。イタズラ自体が楽しいのに加え、さらにママが怒るのが面白くてしょうがない様子。見つかると、ケケケッと笑いながら走って逃げる。まさにドラクエのベビーサタン。ぐ~や~じ~い~!!(「でこぼこフレンズ」のたまごおうじ風に)

 イタズラの事例。
・ご飯を炊いてる途中の電気釜のふたを、ボタン押して開けたまま走り去る
・モノをどこかに持っていき、行方不明にさせる(キッチンタイマーがゴミ箱に!)
・ママがちょっと席を外したスキに、パソコンチェアに座って、キーボードで同じ文字を30回くらい打ち込む
・キャーキャー笑いながら枕を持って廊下をダッシュ、玄関に放り投げる→ママ怒鳴る「こらあ!ダメでしょー!」→さらに大喜び
・ベランダに置いてあったおもちゃの手押し車(砂だらけ)を部屋に入れ、布団の上を引きずりながら歩きまわる
・食事どきは5分しかイスに座ってない。すぐに遊び始めてしまうので、仕方なく遊ぶ横からご飯を口に突っ込む
・ゴミ箱の中身を全部ぶちまける
・大事な寄せ植えの上にサンダルを乗っけて花の首を折る(これには私キレました)
・米びつのスイッチを押しまくる

 しかも、どんなに怒鳴ってもお尻たたいてもゲラゲラ笑ってるのがまた腹が立つ。もっと腹立つのは、その笑顔をみてこっちの怒り顔もついついゆるんでしまうところ(笑)。だからなめられるんだよなあ、くそう。とにかく、危ないことだけはしないでちょうだいよ!
 
 ちなみにカイトには親の泣きマネ(「カイちゃんひどいっ、こんなイタズラして、ママ泣いちゃう、えーんえーん」)は一切効果ありませんでした……。彼が罪悪感をまだ理解できないアホなのか、私の演技がへたっぴなのか、真相はいかに? 私はもちろん、前者だと思っておりますよ、ええ。