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第29回

 長かったお姉ちゃんの夏休みも終わった、始業式の9月3日。さあ、カイトも保育園生活スタートです! 3日間だけ慣らし保育(少しずつ滞在時間を延ばして、徐々に保育園に慣らしていく)をして、私の仕事が始まる6日から、いよいよ9時~5時まで保育園で過ごすのです。

 ママの自転車の後ろに乗り、いざ出陣。まず初日は朝9時から10時半までの1時間半。さあ、カイトの反応やいかに? 泣くかな?と思いきや、園庭に入るなりにぎやかな子供らの歓声を聞きつけ、「あっ!おともだちの声がする!」とうれしそうに叫び、靴を脱ぐのももどかしく教室に入っていき、オモチャに突進。あの、おーい……ママはどうでもいいんかい……?(笑)部屋のあちこちで思い思いに遊ぶ同じ年頃のお友達20人以上と、目新しいオモチャを目前にして、カイトったらもうすっかり好奇心で目がキラキラ輝いているではありませんか。着替えをロッカーにしまいつつ、物陰からそっと様子をうかがっていましたが、不安げにママを探すしぐさなどみじんもなく、そのまま無心に遊び続けている。うん、この調子なら大丈夫かな? 別れ際には私の頭をなでなでしてくれて「じゃあね、ママ、いい子でがんばるんだよ」ってそれ立場逆だし!(笑)余裕の笑顔でバイバイしてくれたので、こっちもホッと胸をなでおろしました。

 予定時刻の10時半にお迎えに行くと、先生いわく「(ママがいなくても)全然平気でしたよ。さすが2人目、たくましいわね~」。ちょうどこれから皆で外遊びの予定だったらしく、「カイもおすなばであそびたい~」と泣き出し、むしろ連れ帰るのがひと苦労でした。「明日はもっといっぱい遊んでいいからね、今日はもう帰ろうね」とさんざんなだめすかして、やっと帰宅。それにしても1日目からすごい慣れっぷりだなあ。まあなんとなく予想はしていたけど。いやあ、ママ助かるわ~。精神的にも実際的にも。

 保育園2日目は、お昼ご飯を食べるところまでチャレンジ。この日の朝も、いやがることなく、大喜びで元気に出陣。保育園に着くや、さて昨日の続きとばかりにバケツをひっつかんで砂場に突進していくので、「こらこら、まずは教室で先生にご挨拶してからだよ!」と押しとどめる。始業の9時よりちょっと前に着いたので、延長保育で早朝から来てる他のクラスの大きい子達も、カイトの教室で一緒に遊んでいました。が、カイトは全然ひるむこともなくその子たちの中にずんずん入っていき、さっさとひとりでおままごとを始めるではありませんか。他の子たちも、なんか知らないチビ助(しかも男子)がいきなりおままごとのキッチンで手を洗う真似、タオルで手を拭く真似、お料理を作る真似なんかを始めたのでびっくりした様子。みんなでぐるりとカイトをとり囲みながら面白そうに眺め、やがて大笑い。「カイトくん、おもしろーい!でもつよそうー!」というコメントをいただきました。うん、キミたちの洞察力は大変鋭いと思う。そして何を言われてもいっこうに平気なカイト(笑)。この日も笑顔でママとバイバイ。

 給食が終わった頃を見計らって迎えに行くと、私の顔を見るなりうるうるして「ママいなくて、カイさみしかったよ……」と半べそ顔でつぶやきながら抱きついてくるではありませんか。な、なんかそんな切ない顔されちゃうと、胸きゅーん! そうか、さすがに今日はママと4時間近く離れててさみしかったか。よしよし、いい子いい子、と膝に乗せてむぎゅーしてやる。するとママ成分を補給できて安心したのか、自分でママの膝から降り、「じゃ、ママ、バイバイ」と手を振ってまた遊び始めるではないですか!(笑)いや、もう帰るんだってばよ!ママに抱っこされてたとき、他の子たちから、ちょっぴりうらやましそうに「赤ちゃんみた~い」とからかわれてました。でもやっぱりまったく意に介さないカイト。キミにはまだ「恥」という感情はないのだな。

 先生いわく、「何でも食べるとおっしゃってましたが、ご飯はあまり食べませんでした」。うーん、やっぱりいきなり給食は無理があったか。うちと違うメニューや、皆で(しかも自力のみで)食べるということに、もうちょっと慣れが必要かな? 「トイレは自分から言ってくれて、ウンチもおしっこもちゃんとできました」おお、そうですか!エライぞカイト! ママは毎日濡れパンツ&ズボンを5枚くらい持って帰る覚悟でいたが、1枚も濡らさずにすんだなんて予想外の快挙だわ。

 保育園3日目、慣らし保育最終日。この日は午後のお昼寝までチャレンジ。お昼寝の終わった頃、3時半くらいにお迎えに行くと、またママを見るなりうるうる。「カイ、ママいなくてさみしかった……」と、ひくひくしゃくりあげながら言う。きゅーん。わーんわーん、といった大泣きではなく、ぐっとこらえた嗚咽に、こっちまで切なくなって思わず目がうるうる。先生いわく、「お昼寝のあと、目が覚めてから、ちょっと泣いたんですよ」ああ、そうか、目が覚めた時、横にママがいなかったから、さみしくなっちゃったのね。昨日同様、膝に乗せてぎゅっと抱きしめてあげる。「いい子だったね、カイト。じゃあ、今日は帰ろうか」と言うと、小さな声で「うん」。ちゃんと先生にもバイバイして帰宅。

 カイトは、こちらが思っていたよりはるかにスムーズに、保育園生活に入れたようです。何より朝、「保育園いきたくなーい!」と言ってゴネたり泣きわめいたりしたらどうしようかと、それが一番不安だったのですが、むしろ朝は大張り切りで、ママがまだお化粧も洗濯物干しもしてないうちから、自分の朝食が終わるともう玄関にとんでって、「じゃ、いこっか!」と言う始末。ちょ、ちょっと待ってくれ!まだ支度が! そして夕方はいつもさみしくなってお迎えに来たママを見るなり泣いてしまう、というパターンに。親としては朝泣かれるよりは夕方のほうがずっと楽なので、ホントにカイトは親孝行息子です。